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かにの泡ぶく


2006-11-26 午後はひとり気ままな休日。

_ サンスイ(橋本電気製)ST-48インピーダンス測定。

今日は午後から、家内と娘が所用で出かけたので、ひとり気ままにST-48のインピーダンス測定でもしてみよっかなっていうことになりました。

SEPP等の出力トランスが無いアンプであれば、繋がれるであろう負荷に比べてある程度出力インピーダンスを下げておけば負荷のインピーダンスはそれほど気にしないでも大丈夫です。この場合、定電圧駆動に近い動作となります。

ところが出力トランスがあると、どうなっちゃうのかな? ってのが今回ST-48のインピーダンス測定をしてみようと思い立ったことの発端です。

世間が真空管の出力変成器アンプが主流であった時代には、アンプの出力インピーダンスと、繋げるスピーカーのインピーダンスは合わせなければなりませんでした。アンプにも、4オームと8オームの2つの出力を持つものもありましたし、16オームや他のインピーダンスを持つものもありました。ところが半導体のOTLアンプが流行ってくると、アンプとスピーカーのインピーダンスマッチングってあまり気にされなくなりました。これは、半導体アンプはその出力インピーダンスをとても低くできるから、スピーカーのインピーダンスが多少変化しても定電圧で駆動できるようになったからです。ダンピングファクターという言葉が聞かれるようになったのも、半導体アンプからじゃないでしょうかね。だって、出力トランス付き真空管アンプでダンピングファクターなんて言ってみたところで、特定周波数で1.0、可聴周波数帯域内で見れば1未満である帯域も多そうじゃないですか。

そう考えると、ダンピングファクターって一体なんなんだ?

って疑問を高校生のころにアンプの自作をしていて思ったことがあります。過去にアキュフェーズのP-20というパワーアンプを使っていたことがあるのですが、このアンプには「ダンピングファクターコントロール」なんつうケッタイな機能が付いておりました。8オームに対して50、5、1 だっけかな。当時私は、FE-207のバックロードスピーカーを使っていたのですが、P-20のダンピングファクターはいつも1で聴いていました。当時半導体アンプの世界では、一般には高ダンピングファクターのほうがスピーカーに対する制動力が高く、音が良いとされており、シグマドライブというケンウッドのアンプで使われていた駆動方式ではダンピングファクターが一万オーバーなんてのもありました。

が、ウチのスピーカーシステムではP-20で比較する限り、どこをどう聴いても、50より1のほうが躍動感溢れる生き生きとした音が出てきたものです。

そんなわけでダンピングファクターは謎なファクターなのですが、それはそれで今日のところはおいといてですね、今回は出力トランスのインピーダンスって、一体なんのインピーダンスなのか? という点を自分なりに納得したくて実験してみることにしたのです。

_ 出力トランスのインピーダンスとはナニ?

例えばST-48であれば、一次側:二次側 = 600(CT付):4 or 8 オーム となっております。これは、一体なにをもってこの数値が規定されているのでしょうか。

変成器というのはインピーダンス変換器でもありますから、インピーダンスが変換されるわけです。数日前の「かにの泡ぶく」でも、高周波トランスはインピーダンス変換によく使うなんてことを書きましたが、ってことは、オーディオ用の出力トランスであっても、ST-48であれば一次側を600オームのインピーダンスにしたとき、二次側が 4 or 8 オームでマッチングが取れるのであり、あるいは(また)、二次側の 8 オームのところに 8 オームの負荷を繋げた場合、一次側が 600 オームになるんだよ・・・と考えることができます。トランスの巻線自体が記載のインピーダンスを持つわけでは無いということです。これは重要なポイントです。
なぜなら、ゲルマTrのSEPPアンプの場合、出力インピーダンスがかなり低い(十数オーム)ので、ちょっとアレですけど8オームのスピーカーから数百オームのヘッドフォンまで問題なく接続できますし、それによる周波数特性の波立ちもあまり心配要りません。
ところがA級アンプをトランス出力で作ろうと思った場合、8オームのスピーカーも繋げられて150オームのヘッドフォンも繋げようと思った場合、同じ出力トランスにいきなり接続してしまうと負荷によりトランスの一次側のインピーダンスが変わってしまいます。さらに、トランスってインダクタですからコンデンサ以上に周波数依存性があるはずです。インピーダンスが変わるだけでなく、周波数特性もひょっとして大きく変わるんじゃ? 8オームのところに150オーム繋げちゃったらダンプが効かなくなって暴れるんじゃ? という懸念もあります。

インピーダンス特性
つうわけで百聞は一見にしかず。実験実験さぁ実験・・・です。

10Kオームの可変抵抗器を用意して、低周波発振器とオシロを繋いで測定してみました。波形から電圧をオシロ管面読みしているので、精度はそれなりですが測定結果をご紹介します。
二次側(負荷側)のインピーダンスがミスマッチした場合、予想以上に特性が悪化するということがわかりました。これを見る限りでは、出力トランスの負荷インピーダンスは、規定の負荷を繋げないとまったく予期しない特性になってしまうってことがわかります。しかも今回は、負荷は純然たる抵抗負荷。実際のスピーカーやヘッドフォンであれば、多少の差あれど山有り谷有りなわけですから、状況はさらに複雑になります。

うーむ、難しい。

でもとても楽しい実験でした。

ヘッドフォンを使う際には、ST-48の出力にST-62の二次側を繋げれば、120オームの出力を得ることができるって話がありますが、そんなことはじめちゃうと、それこそ一体なにやっているのかわからん状態になります。全く素人ってやつはなにを言い出すものか・・・>俺。

まったく。

_ 念のためにやってみよう。

一体なにが念のためなのか全く不明なのですが、ST-48 → ST-62 という二段攻撃で100オーム負荷を繋げてインピーダンス測定してみました。


インピーダンス特性-その2
こんな不合理な、こんなそれこそケッタイな構成で回路を設計するなんてありえるわけないのですが、ついでにやってみました。 結果は、ちゃんと予想した通りにマッチング取れているっぽいですが、ところどころやっぱ歪が加算積算されてヘンなことが起きているようではあります。

なんの役にも足しにもならない実験でした。


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