2009-07-17 ちょっとした失望感。_ シグマDP2里帰りから戻る。ちょっとしたマイナーなトラブルの点検修理で会津若松に里帰りしていたDP2。大変綺麗になって本日、無事帰還しました。 日曜日に送付しましたので5営業日で手元に帰ってきたことになります。実に迅速丁寧な対応をいただきましたシグマさんには感謝感激であります。 いつまでも写真好きなメーカーであってくださいね。応援してます。 _ オリンパスE-P1標準ズームの最もシャープになるF値は?7/12に採取したデータですが、まとまりつつありますのでご紹介したいと思います。 今回は、定量的に評価しようと思い、ISO12233解像力チャートを撮影し、この解像力チャートの中にある少し斜めの黒帯のエッジを使ったステップ応答によるMTF計測をしてみました。計測には、QuickMTFを用いました。 MTFデータの見方をご存知でない場合、このグラフを見てもなにがなんだか・・・だと思います。各人勉強してくれ・・・と言いたいところですが、ごく簡単な説明を、こちらに置きました(QuickMTFで生成されるMTF特性図の見方)(別窓開く)。
まずはじめにこの結果を見て思ったこと。 E-P1画像処理でエッジ立て過ぎ! これって、いわゆるコンパクトデジカメや、携帯電話内蔵カメラのチューニングです。F8.0以下で低周波部がもれなく1.0を超えており、画像処理による過剰強調で、エッジに縁がついていることを示唆しております。 と、本件についてはとりあえずおいとくとして・・・ この結果からわかることは:
・今回撮影した条件ではF5.6が最大解像を得られるF値である。 ・F11以上に絞ると回折ボケが発生して急速に解像感が失われていく。 ということです。シグマDP2と同じ傾向ですね。また、私が過去に銀塩で試写したレンズ(Mロッコール40mm/F2など)も同じ傾向を示すものが多かったです。F5.6ぐらいで最大解像というのは、光学系の相場みたいなものなのでしょうか・・・ね。 今後の試写は、F5.6で撮ってもよいのですがオリンパスE-P1標準ズームは最テレ42mmで開放Fが5.6ですので気持ち少し絞ってF6.3がよさそうです。特別な事情が無き限り、E-P1標準ズームでの今後の試写はF6.3で行うこととします。 _ オリンパスE-P1標準ズームの最もシャープになる焦点距離は?ざくっと傾向を掴みたいので、ざくっとズーム位置を変えて調べてみました。絞りはF6.3固定です。 オリンパスE-P1に1952年製ズマロン35mm/F3.5を付けたもの、エプソンR-D1に同じズマロンを付けたもの、シグマDP2での結果も合わせて入れてあります。
相変わらずDP2のすさまじさぶりが爆発しています。ベイヤーではあり得ないカーブを描いております。これはもうさすがとしかいいようがありません。 結果は:
・広角端(14mm)が最大解像を示す。 ・望遠に行くに従って解像度は低下してゆく。 という、ごく当たり前のものでした。ま、これはズームレンズの一般的な特性ですので改めて言うことでもないのですが・・・ ただ、最テレ端である42mmは、特に低周波域のMTFが極度に高くなっており、なんでこんなことになっているのか謎であります。光学系の特性なのか、バックエンドの画像処理で最テレ端時にはより強力にエッジ強調をかけるようなことをしているのか・・・ しかしながら全てのズーム段において、1952年製のズマロンを超えられないというのはどうしたものでしょうか。もちろんズマロンと言えば歴史ある世界に名高い名レンズでありますが一方で、マイクロフォーサーズに最適化されていると思われる最新設計(と思われる)のM.ZUIKO DIGITAL ズームレンズの性能がこの程度であるという事実は、どう捕らえたらよいのでしょう・・・ M.ZUIKO DIGITALシリーズは今のところ2本しかリリースされていませんしまだランク分けされていないですが、値段から判断すれば「STANDARD」グレードでしょうね(所謂ところの『梅レンズ』)。『梅ズームの割には頑張っているなぁ』『設計製造コスト考えたらこんなもんでしょ』と見るべきか、『事実上の標準レンズなんだからもう少し頑張って欲しいなぁ』と思うか・・・私としては、まぁ、ボディー単体購入金額+1万円でついてくる標準ズームレンズとしては、まぁこんな感じだろうな・・・って感じですかね。 さらに見てみますと、ズマロンを付けたR-D1の特性と同E-P1のそれを比べてみると非常に面白いことがわかります。E-P1では低周波部でコントラストが1.0を軽くオーバーしていますが、R-D1のそれは決して1.0を超えることが無く、また、R-D1のコントラスト減衰特性は解像を残したまま、実にゆとりをもったなだらかな減衰の仕方をしています。これだけを見れば、E-P1はコンパクトデジカメの延長線上にある画作り傾向であり、R-D1はハイエンドデジカメの画作り傾向であると言うことができそうです。どちらが良いか悪いかという問題ではありませんが、それぞれのカメラが『どちらを向いて作られたものか』ということを知る手がかりには、なります。 ただ、ここで注意しなければならない点があります。 M4/3のカメラシステムは、ボディー側でレンズの素性を信号ピンから読み取り、かなりの収差補正を画像処理で行っています。例えば歪曲収差などもリアルタイムで画像処理されてもちろんライブビューにも反映されています(これは地味だけど大変にすごいことなのだ)。 ひょっとして、付けられたレンズが「STANDARD」と判断された場合には、画像処理で過剰なエッジ補正が作用するようなことが行われているのかもしれません(いやそんなことしないかな?)。ズマロン(信号ピンが無いレンズ)付けたときどうなるかについては謎ですが、もしそのような補正が行われるのだとした場合、MTF結果を見る限りでは信号ピンが無いレンズの場合は「STANDARD」の処理がなされているようですね。 この謎を解明するためには、もっとグレードの高いレンズをE-P1に付けてみて、MTF特性を取ってみるしかありません。 MTF測定と同時に、実際のTV本解像力も測定しましたので以下にご紹介します。測定には、HYResを用いました。今回は、画像間の画素数の違いを吸収させる目的で、「解像率」なる指標を勝手に作って合わせて記載しました。
■解像率
E-P1は、ISO100, F6.3で撮影。R-D1はISO200, F6.3で撮影。DP2はISO100, F5.6で撮影。 だいたいMTF特性と相関がとれる結果になっています。 R-D1にズマロンを付けたものも素晴らしい解像力を示し、DP2については相変わらず変態的な数値をはじき出しています。 なお、DP2については以前も、正規な解像力チャートで解像力測定をしましたが今回、新たに用意したインチキ4000本チャートで再度測定しなおしました。これは、測定環境を揃えることと、前回のデータと比較することで今回の実験データの信憑性を確認するためです。 ここで注意していただきたいのはE-P1のズマロンとR-D1のズマロンの数値です。同じレンズで解像率がR-D1のほうが高い イコール R-D1のデジタイズエンジンのほうが優秀だ! というふうには即判断できないという点です。 E-P1に比べてR-D1のほうが、センサー上のひとつの画素のサイズが遥かに大きいのです。よって、ズマロンの持つ解像力によっては、E-P1のセンサー上にはきっちり解像していないという可能性も有り得ます。この問題を検証するためにはズマロンのもつ光学的解像力をきっちり測定する必要があるのですが、残念ながら かにこむラボ にはそのような設備がありません。 _ 最後に・・・オリンパスE-P1の下品なエッジについての私見。E-P1のMTF特性図を見てはじめに思ったことは上でも書きました通り E-P1画像処理でエッジ立て過ぎ! というものでした。 QuickMTFで生成されるMTF特性図の見方でも書きましたが、MTF特性カーブが1.0を超えるとそれは過剰補正を意味し、エッジの周囲に本来の被写体には無い「縁」が付きます。 コンパクトデジカメや携帯電話内蔵カメラの画像は、「ぱっと見」重視な画作りなためにエッジの過剰補正は常態化しており、メーカー問わずほぼ全てのモデルでE-P1のようなMTF特性を示します。 が、オリンパスE-P1が、果たしてこれでいいのでしょうか。 あくまでも私見ですが、これはちょっとやりすぎだろうに・・・と、思います。 私はE-P1を「高級なデジタルカメラ」だと思っていたのですが、私の認識が少し違ったのでしょうか。もし仮にコンパクトデジカメがレンズ交換可能になった高級機・・・という「高級」だったのだとしても、もう少し上品な画作りにして欲しかったです。 ちなみにエッジに付く「縁」とはどういうものか、具体例をお見せしましょう。
これは、それぞれのデジカメで撮影されたISO12233解像力チャートの、ステップ応答を観測する矩形エリアを、フォトショップ上で400%拡大表示したところをキャプチャしたものです。判別しやすいように、グレイスケール化して画像の明るさをそろえております。 E-P1を見ると、エッジに矩形の黒よりもより黒い黒、紙の白よりもより白い白が確認できます。 これが「縁」です。 R-D1はもとより、コンパクトデジカメであるDP2ですらここまでの過剰補正は行われておりません。 この「縁」、すごく気になるんですよね。不自然な描写になります。 E-P1で過去にご紹介した屋外実写画像も、よく見ていただければこの「縁」がどんなふうに実写で表れてくるのか、確認いただけると思います。 さて、ここまで書いていて、「そういえばパナのM4/3機はどんな画作りなのだろうか」と思い、解像力チャートを写した画像が無いかあちこち探してみましたところ、マイコミジャーナルさんのパナソニック LUMIX DMC-G1 実写インプレッションという記事を発見しました。 この記事中段にあるF5.6で撮影された解像力チャートを使って、MTFを取ってみました。
パナのDMC-G1は、E-P1に見られるようなエッジの過剰補正は行っていないことが、わかります。実際の解像度チャートが撮影された画像も、極めて自然な解像をしていて非常に上品な感じです。 このへんの処理はファームウェアや現像ソフトのバージョンアップで対応可能な領域です。E-P1の今後のバージョンアップに期待したいところです。 _ シグマDP2とオリンパスE-P1使ってみての感想。どちらもある程度使ってみましたので、ある程度使った時点でのインプレを簡単にまとめておこうと思います。
SIGMA DP2Olympus E-P1こんな感じですかね。 もっと読みたい奇特なかたは、↓の読みたい月をクリックしてね。 |
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はじめまして。<br>ずいぶん詳細な解析をやってらっしゃいますね、とても参考になります。<br><br>E-P1のMTFデータについて、画像処理でエッジを立てすぎとの事ですが、それならシャープネスを弱めたらどういうカーブになるか気になります。<br>ですので、もしよろしければカメラ内生成JPGで構いませんので、E-P1(できたらDP2も)のシャープネス設定別のMTFデータを調べていただけないでしょうか。
12345さん、はじめまして。<br>Raw撮りしたものを現像ソフトの設定で、シャープネスを弱めて実験してみたのですが、解像度(TV本)の消失が顕著で「これはいまいちだな」と判断、現在のところ詳細な解析にまでは至っておりません。<br><br>ちょっと時間を見て、改めてデータ採取してみますね。しばらくお待ちを・・・
返信ありがとうございます。<br>G1とE-P1のセンサーは同じはずなので、違いが出るならLPFと現像ソフトだと思うのですが、MTF特性カーブをG1に近づけようとして解像度が落ちるのならLPFの違いが大きいのでしょうか。<br>E-P1は従来のオリンパス機に比べLPFが改善されて解像度が上がったと聞いて期待しているのですが…うーん。<br><br>実験については気長にお待ちしてますね。
今日付けの泡ぶくで、データ掲載しました。<br>E-P1は、とはいえベイヤー補間で基準ライン数の80%以上の解像力を示しますから、LPFはかなり吟味されているように、思います。<br><br>基本性能は悪くはないと思うのですが、いかんせん、50周年縛りが製品の完成度に影響を与えた感は、ありますね・・・