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MTFとは、Modulation Transfer Function の頭文字を取ったもので、光学的にはレンズ性能を評価する指標のひとつですが、デジカメ画像を対象とした場合には、デジカメ内で行われる画像処理をも含めた「撮像システム」としての特性を見ることになります。ここでは、今回QuickMTFを使って測定される、エッジのステップ応答MTF特性図についてのみの説明を、超乱暴かつ簡単に行います。ここで説明する以外にも多くの特性図のパターンがありますので、ちゃんと知りたい場合は各自勉強してください。
真っ白な紙の上に、黒いインクで描かれた四角をイメージしてください。その四角はかなり精密なペンで描かれており、図形の縁は非常にシャープです(ぼけていません)。
これを、デジカメで撮影します。すると、この白い紙の上に描かれた黒い四角が撮影されますが、このとき、撮影された四角は、どう写るでしょうか? 理想的には完全にシャープな四角として写れば嬉しいですね。具体的には、四角の縁が、黒と白の画素だけで構成されていて、その間に灰色みたいな中間調が無い状態です。
しかしみなさんもご存知の通り、そんなふうに写るデジカメはまずありません。少なからず、エッジがぼけてしまいます。特にベイヤー配列というカラーフィルターを持ったデジカメでは、その原理上必ずぼけてしまいます。
イメージ図を作ってみました。
右のエッジが少しぼけているのがわかると思います。これはフォトショップでガウスぼかしをかけたものですが、QuickMTFで測定されるMTF特性図は、超乱暴に言えば『デジカメで左図を撮ったとき、どのぐらいぼけるのか?』を示しています。
実際に上の2つのエッジをQuickMTFで測定してみますと、以下のようになります。
少し難しい話をします。我慢して読んでください。
グラフの横軸は周波数で、黒白エッジを撮影した場合、右に行くほどエッジのキワ(エッジ近傍のわずかな領域)を観察していることになります。左に行くほどエッジのキワから離れた2点を観察していることになります。グラフの縦軸はコントラストで、上に行くほどくっきりはっきりと撮影されていることを意味します。
完全にシャープなエッジが上図黒のラインを取りますので、デジカメの画像を測定した場合、このラインに近いほどシャープな写りを示すことになります(このラインを超えるところはなにかおかしなことが行われているということでもあります)。ただ、エッジのステップ応答を測定する際には、上記のような完全に垂直(もしくは水平)なエッジでは無く、少し斜めに傾いたエッジで測定しますので、実際にはこんなに大きくコントラストは出てきません。もっと低いコントラストカーブになります。ここでは話をわかりやすくするためにシンプルな例で説明しました。
縦軸の最大値は 1.0 で、これが、最大コントラストです。すなわち、測定矩形の黒と白のコントラストで、これ以上のコントラストは本来観測されないハズなのですが現実には1.0を超える場合もしばしば観測されます。「ぱっと見」重視のコンパクトデジカメや携帯電話内蔵のカメラで撮影された画像はほぼ例外なく1.0を超えてしまいます(線が上に飛び出してしまう)。これは、「ぱっと見」の解像感を無理矢理高めようとしたために、画像処理でエッジ強調(シャープネス)を過剰にかけていることを意味します。
それに対して画像の素材性、上品さに重きをおくハイエンド機では、このMTFカーブが1.0を超えることは無く、かつ、もとから解像力がありますので右側に向かってなだらかにコントラストが低下してゆくラインを描きます。
上図赤いラインでわかりますように、解像力の無い撮像系は、コントラストの落ち方が急峻になります。
ここで気をつけなければならない点は、『デジカメの画像を使って評価しているので、見えているのはレンズ単体の特性だけでは無い』ということです。デジカメの内部で過度のノイズ除去を行っていたりしますとそれは解像度に悪影響を与えますし、過剰なエッジ強調は低周波域でのオーバーシュートを発生させ、エッジに縁が付く現象を発生させます。