2011-04-05 どうなっているのだ?!_ 朝日新聞致命的ミス! 100mSv被曝時の発がんリスクについて。
以下の記述は、2011年4月5日 09時40分現在の青木@管理者の知識に基づく指摘です。単に私が無知なだけで実は朝日新聞の数値は正しいかもしれません。そこんところお含みおきください。
今朝、いつものように珈琲飲みながら朝刊読んでいたのですが、思わず珈琲噴き出しました。 『100ミリシーベルトでがんリスク5%増』という見出しで、これをICRPの数値として紹介しています。 ICRPの被曝による発がんリスク上昇数値は、1Sv(すなわち1000mSv)のときに5.5%としているのであって、これから100mSvなら0.5%という数値が一般には使われています。低線量被曝の影響は比例計算で補間できるという根拠からです。
すなわち、1Svの1/10である100ミリシーベルト浴びると、 0.6% 発がんリスクが高まる。その内訳は、0.1% が非致死がん、0.5% は致死がん(被曝でがんになった人の83%はがんで亡くなる)ということかと。 どうも上記の「非致死がんリスク」についての解釈は、かなり怪しいようです。ということで一旦取り消し線引きました。もう少し調べてみて、はっきりした数値を得る根拠が出来たらまた追記します。(2011年5月3日 18:12 追記) おいおいって感じですよね。誰もチェックしてないのかこういう数値を。定量数値のミスだけに非常に重大なことですこれは。 大切なことなので、この忙しい朝の時間に緊急で書きました。(09:40記)
あれ? ちょっと待てよ・・・
自宅に帰還後、いろいろあちこち調べてみたのですが、どうしても100mSv被曝で発がんリスク5%上昇という数字は見つけられません。よって、取り消し線は解除しました。
_ 朝日新聞しれっと訂正?! 100mSv被曝時の発がんリスクについて(2011年4月24日 10時53分追記)。今日2011年4月24日の朝日新聞朝刊。いつものように朝の珈琲飲みながらつらつら読んでいますとなんだかつい先日見たのと同じような記事があるではありませんか。 『放射線、体にどんな影響があるの?』というタイトルのコーナーにおいて今度は、ICRPの数値として、100ミリシーベルトでがんリスク0.5%増という値を紹介しています。 上でも触れていますが、これが、ICRPが出している正しい数値です。 では、上で私が間違いを指摘した4月5日の朝日新聞朝刊のICRPからの引用数値「100ミリシーベルトでがんリスク5%増」と今朝朝刊の記事の数値の矛盾は、どう折り合いを付けるんですかね朝日新聞さん。 『4月5日付け御社朝刊で紹介されていたICRPの発がんリスク数値と、本日4月24日付け御社朝刊で紹介されていた同じICRPの発がんリスク数値が、同じ100mSv被曝時で10倍も違うのですがなぜですか?』 という質問をしてさらに突っ込んでみるという手もあるのですが、大人気ないのでやめておきましょう。 事実上の訂正記事ですよねこれ。世間に向けて正しい数値が紹介されたので、これでよしとします。 ちなみに朝日新聞さんからは、今現在、上記私の質問への回答はまだありません。恥ずかしがりやなんですかね? ただね・・・数値は正しくなりましたが、相変わらず放射線障害をなんとか過小に思わせようという意図がありありと感じられます。記事中、この0.5%の発がん率上昇について、日本人の3人に1人はがんで死ぬから、0.5%ぐらいどってことない。たばこを吸うほうが危険だって言ってますが、この考え方は大きな間違いですから騙されないようにしてくださいね。 0.5%の発がんリスク上昇についての私の考え方(というか、私の意見ではなく論理的にも正しい考え方)はこちらをご覧ください。 あとね、たばこと比較されてもねぇ・・・たばこ吸う人は健康を害することを承知で吸っているわけですから自由意志で発がんリスク上昇させているわけです。放射線障害はそうでは無い(ラドン温泉とかに進んで行く人を除く)。無条件に、回避できない一方的に降りかかってくるリスクなわけです。自分はたばこを吸わないのに、隣の人が吸ったたばこの間接喫煙で肺がんになったら冗談じゃありませんよね。それがたとえ0.5%であっても、ないほうが良いに決まってます。 飛行機事故との比較もナンセンスです。飛行機事故に遭いたくなければ、飛行機に乗らなければリスク回避ができます。しかし、放射線障害はそうでは無い。 原発事故以降、国が定めた暫定基準値もそうです。あれは汚染食材を流通させるための騙しですから非常に危険です。各地のスーパーで開催されている「東北応援フェア」も私はどうかと思っています。本来東電と国が全量買い上げるべきものですよ。実は現地でもそう思われている人も多いようです(福島県農民連事務局長 根本 敬さんの発言)。自分は食べてもいいですが、子供には食べさせません。被曝したってよいことはひとつもありませんから・・・特に子供は。 もっと読みたい奇特なかたは、↓の読みたい月をクリックしてね。 |
最新ツッコミ |
管理人さんの説明はとってもわかりやすいです<br>ニュースを見ているだけだとただちに健康に影響はないってばかり言っててかえって不安になります<br>お忙しいとは思いますがこれからもいろいろ教えてくださいませm(__)m
少しでもお役に立ててるのであれば、私も嬉しいです。<br>今までは自分的にかなり自粛した書き込みスタンスだったのですが、少しだけ、思うところをそのまま書いてみようかなって気になってきました。<br><br>ありがとうですよ!
私も同じくこの記事を見て、ビックリです。さっそく朝日新聞に問い合せしたところ、科学医療グループ石田さんから、返信がありましたが。ICRPの勧告の原本コピーが添付されていたのですが、こちらの質問の意味が伝わっていないようで、もう一度質問をメールしたところです。
小笠原さん、こんばんは! <br>私のところにも質問した翌日には返信があったのですが、その返信内容があまりにも的を得てなかったので、すぐさま再質問したのですが一週間以上経過した今、いまだ返信をいただけていません。 <br><br>いただいた返信の内容抜粋は: <br>-------- <br>4/5日付朝刊の記事に「がんリスク5パーセント増」とあるのは、放射線の影響がなくてもがんになる人はいるが、放射線の影響を受けると、それに比べて5パーセント多くの人ががんになるおそれがある、という意味。 <br>この増加分を、社会全体でみると、0.5%分の増加にあたる、というのが、3/28日付朝刊の記事で書いた数字である。 <br>放射線の影響によるがんのリスクの確率については、「がんになる人」を分母としてとらえるか、社会全体を分母にするか、二つの考え方がある。 <br>国際防護委員会(ICRP)でも、その二つの数字を、相対リスク、絶対リスク、として公表している。 <br>-------- <br><br>これに対して私の再質問の内容抜粋: <br>-------- <br>調べてみたところ、放射線被爆による発がんリスク上昇についてICRPから出されている数字は: <br><br> ・1シーベルトの被爆を受けると被爆由来のがん罹患率は被爆を受けた集団全体の 5% となる。 <br> ・1ミリシーベルトの被爆を受けると被爆由来のがん罹患率は被爆を受けた集団全体の 0.005% となる。 <br><br>というものしか見つけられなかった(ICRP1990年勧告より)。 <br>御社の当該記事の記述は、放射線を受けない際にがんを罹患する患者数に対して、放射線を100ミリシーベルト受けた場合にはがん患者が 5% 増えるという意図であると理解した。 <br>となると、この 5% を出すためには放射線を受けない際のがん罹患率が必要になるが、この 5% という数値はどうやって出したのか? もし、ICRPの勧告にその数値があるのであれば、勧告の年度と番号を教示いただきたい。 <br>御社が独自に計算したものであれば、その計算根拠を教示いただきたい。 <br>日本の生涯がん罹患リスクは、国立がん研究センターの資料によると、男性:54%、女性 41%、平均で 47.5% 。(ttp://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/pub/statistics01.html ) <br>これに御社の当該記事の解釈を適用すると、がん患者数 47.5% に対して、放射線を100ミリシーベルト受けた場合にはがん患者が 5% 増えることから、47.5 + (47.5 x 5%) = 49.8% となり、絶対リスク増分としては、49.8 - 47.5 = 2.3% の増分となる。 <br>この数値はICRPの勧告に比べても随分大きい数字と思うが? <br>-------- <br><br>100mSvで癌リスクが5%も上昇したら、福島第一原発事故に際して緊急に引き上げられた作業員被曝限度250mSvって、作業員に癌になれって言っているようなもんですもんね。 <br>いくらなんでもそんなことあってはなりません。 <br><br>(2011年4月15日 08:50 質疑のやり取り内容抜粋一部修正しました)
ICRPの数字(1 SVあたり5%)は、集団全体に対する絶対リスクであり、しかも、「発ガン」リスクではなくて、「ガンによる死亡リスク」です。あちこちのブログやら解説の多くが、この数字を「発ガン」リスクとしていますが、間違いです。ATOMICAに日本語の解説があるのでご覧ください。<br><br>一方、放射線による相対的な発ガンリスクは、放射線影響研究所のWEBに解説がありますが、1 Svあたり50%です。絶対値に直すと、25%くらいの人が余分に発ガンする勘定です。仮に100 mSvまで線形だと仮定すると、100 mSvでは発ガンリスクが5%増えて50%から52.5%になることになります。放影研のwebに、相対過剰リスクと絶対過剰リスク(どちらも「発ガン」)があるのでご確認ください。<br><br>なお、これらの数字はほぼ全て広島・長崎の被爆者の追跡調査から得られているので、一度に全量被曝した場合のものです。低線量である期間にわたって被曝した場合はこれらより低くなるはずですが、どれくらい低くなるかは誰も正確には知らないと思います。
改めて調べてみました。<br>なるほど。確かに100mSvで0.5%は致死がんリスクでした(ICRPの1990年勧告)が、非致死がんリスクは、同100mSvで0.1%と出ているようです( ttp://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-03 )。よって、発がんリスクとしては、これをあわせて 0.6% / 100mSv と言ってよさそうです。<br><br>一方、放射線影響研究所の数値は私も過去に見つけましたが、これは原子爆弾による放射被曝時の調査であり、数秒という極めて短時間に1Svなり100mSvの被曝を受けたケースですから、今回のような比較的少ない線量を継続して浴び続ける被曝のケースに適合させることはできないと判断し、特に触れてはいません。<br><br>いずれにしても、大手新聞ですら正確に理解していないことは確かなようです。
どうも。<br><br>「発がんリスクとしては、これをあわせて 0.6% / 100mSv」→そこの記述を読むとそう思われるのは仕方ないのですが、これは間違いです。<br><br>ICRPの言う「非致死ガンリスクは、同100mSvで0.1%」とは、発ガン確率Pに重篤度Wで重みを付けた値(デトリメント)です。そこの表3の記述は不正確です。ICRPのオリジナル勧告書には確率とデトリメントは厳密に使い分けられています。Wは死亡の場合に1で、死亡しない場合は0と1の間の値を取ります。非致死ガンの場合は、早期発見でなおればW=0.1とか、寿命が半分に縮んだらW=0.5とか(この辺の数字は適当です)決めて、重みをつけたものです。致死性の場合はW=1なので、デトリメントと確率が一致しますが、非致死性の場合は、W<1なので、デトリメント<確率になります。<br><br>だから、「非致死性がんの発ガンリスク」自体は1 Sv当たり1%よりも相当に大きな数字になります。<br><br>それから、ICRPの勧告書をお読みになればわかりますが、基本的には広島長崎の調査(放影研のデータ)を基にしていて、 「一発の被曝ではないから」ということでリスクを1/2にしているだけと考えてよいです (線量-線量率効果係数 DDREF=2という言い方をします)。 ttp://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-08-04<br><br>このあたりのことは理解しているはずの専門家も、なぜかきちんと解説しない傾向があるようです(東大病院の中川准教授も相当にいい加減なことを書いています)。そういうこともあって、新聞記者もよく理解していないのだと思います。<br><br>低線量被曝の場合の発ガンリスクについては、広島長崎の低線量被爆者のみについて詳細に解析した論文があって、100 mSvまでは線形性があるとされています。それが「100 mSvで相対過剰リスク5%」の根拠です。<br><br>なんども投稿すみません。
> なんども投稿すみません。<br><br>とんでもないです。こちらこそ、間違った解釈をご指摘いただきまして感謝であります。ありがとうございます。<br><br>もう少し時間をかけて調べてみることにします。二次情報では限界があるので、ここはひとつ原本取り寄せるしかなさそうですね。