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かにの泡ぶく


2008-07-04 じめじめ度高し・・・

_ 「うる星」原作コミックス新装版読破後の考察。

昨日「うる星」原作読破したあとに、少しいろいろ考えながらTVアニメ版「うる星」をチラホラと見てみました。第1話から順繰りに数話と、あと、一気に飛ばして131話から最終話までの間をかいつまんで数話ほどです。

昨日の「かにの泡ぶく」でも書いたのですが、原作は最終話まで、ストーリー展開のリズムを崩すことなく実にトントンと読み進められました。これを踏まえて考えてみますと、原作の性質というか、性格、空気感をよく表現できているのは、比較的原作に忠実と言われる131話以降・・・すなわち押井さん降板後・・・では無くむしろというかやはりというか、押井さんが担当していた初期のころの「うる星」のほうではないかと思ってしまいます。

この件については、ビューティフル・ドリーマーのオーディオコメンタリーで押井さん自身が、TVアニメ版は原作離れに対する非難が轟々で「最初の半年はそれはもう酷かった」と語っております。また、高橋留美子さんも、少年サンデーグラフィックで押井時代のテレビシリーズについて「やってはならないことをしていた」と語っているそうです(ウィキペディアのビューティフル・ドリーマーの記事より)。

高橋さんの発言は、この部分だけだと判断が難しいのですが(「やってはならないこと」が良いことだったのか悪いことだったのかが曖昧)、素直に読めば高橋さんにとっては「好ましくないこと」と解釈すべきでしょう。

そう考えると、私が特に好きだと感じている押井時代の初期のテレビシリーズは、こと原作者や関係者には不評だったようです。また、視聴者からの苦情も少なくなかったようなのですが・・・

不思議なものですね。

原作の持つあのリズム感、テンポのよいストーリー展開を上手く表現しているのって、まさに押井時代の初期の「うる星」TVアニメ版だと思うのですが。

そりゃ確かに原作逸脱無視は目に余るところがあるかもしれません。でも、アニメ化するに際しては、いずれも許される範疇を越えてはいないと私は思います。じゃりテンがあんなに早く登場したり、いきなり軍隊が出てきたり、小悪魔の回にラムが居るなど、原作相違は挙げ始めればキリがありませんが大意においての「うる星」を逸脱するほどのものでは無いんじゃないでしょうかね。

が、ま、これは「うる星」が全話揃った今でこそ言える感想なのだとは思います。リアルタイムで放映時は、今後どうなっていくのか見えない状況でまさに暗中模索しながらのメイキングだったでしょうから、その時点での感想は全話見終わった後での感想とはまるで異なるものであって当然です。

どの世界でも、名作と呼ばれる作品には議論が絶えないものです。

そんなところも楽しんでゆきたいです。

_ 「ビューティフル・ドリーマー」のオーディオコメンタリーを見てみる。

うる星やつら劇場版第2作「ビューティフル・ドリーマー」のDVD版には、オーディオコメンタリーが入ってます。

進行の雰囲気を簡単に紹介しますと・・・

聞き手:池田憲章

語り手;  押井守(監督)  西村純二(演出)  千葉繁(声優:メガネ役)

というメンバーで、「ビューティフル・ドリーマー」の映像を全編流しながらコメントしてゆくという形です。よって、映画まるまる一本見るのと同じだけ時間を要します。

して、その内容なのですが、実に面白いです。

普通、オーディオコメンタリーって、聞き手の自己紹介から始まるものですが、開始直後の静まり返っている中、いきなり押井監督が:

押:『このマークって今でもこのマーク?』
池:「そうです」
押:『んー』
池:「これ、円谷英二が撮影したカットなんスよ」

・・・知らなかった。いきなり冒頭から笑かしてくれます。


内容についてはとにかく面白いです。「ビューティフル・ドリーマー」はSF好きであれば「うる星」抜きで見てもまるで問題なく楽しめる映画ですから、ぜひみなさんもDVDで見られてください。そしてぜひこのオーディオコメンタリーも見てみてください。必見です。お勧めします。 オーディオコメンタリーで語られている内容についてはネタバレしちゃぁ面白くありませんので、あえて触れないことにします。TVアニメ版の話や前作「オンリー・ユー」の話、TVアニメ版130話以降を担当したやまざきさんとの話など、ほんと盛りだくさんです。

そんなオーディオコメンタリーですが、最後のシーンだけ、ネタバレしちゃいましょう。

私もきっとそうだろうと思っていたのですが、押井監督自らの語りで裏が取れました ^^)

このシーン、一番左は夢邪気ですが右の二人、これは制作スタッフで、右の赤い帽子が原画担当暴走アニメーターの山下将仁さん、その隣のジャケット姿が作画監督、美術の森山ゆうじさん。


う〜〜〜ん、実に面白いです。

やはり、押井さんは錯乱坊が好きでないみたいですね。オーディオコメンタリーの中で「邪魔だから封印した」と、認めてます。きっとTVアニメ版でも錯乱坊はあまり出したくなかったのかな。だからじゃりテンをあんな早期に持ってきたわけか。私はあの破壊坊主、好きなんですけどね〜。

しかし押井さんよくしゃべります。よほどこの作品が好きだったのでしょう。

_ 「うる星」TVアニメ版第101話「みじめ!愛とさすらいの母!」を見てみる。

ここまで見続けて、「ビューティフル・ドリーマー」のオーディオコメンタリーを見たあとに、「うる星」TVアニメ版全218話中、問題作Best3に入るであろう第101話を見てみました。

当時押井さんが社長から呼び出し食らって「おまえいい加減にしろ!」と怒鳴られたという話です。「ビューティフル・ドリーマー」のオーディオコメンタリーの中で押井さん自身「なにがいけなかったのか(なんで怒られたのか)未だにわからない」というような発言をしております。

1983年7月27日水曜日放映。この話はリアルタイムで見ましたが非常によく覚えております。当時の私は、「実に不気味」「わけわからん」「なんか怖い」という印象を持った記憶があります。が、改めて見てみると実に面白いです。大人になったってことなんですかね。

全般的に「ビューティフル・ドリーマー」っぽいテイストですが、こちとら水曜日19時半からというゴールデン枠でフジテレビで毎週放映されていたTVアニメシリーズです。こんなの作って放送しちゃうって、あまりにもすごすぎます。さすがにこれは怒鳴られても仕方ないようにも、思います。

ま、作った側も覚悟の上でしょうし、放送する側も「怒鳴る」程度で放送しちゃっているわけですから、なんというか、いつ刺し違えるかわからない真剣勝負が許された、良き時代。

今では絶対に不可能でしょう。

う〜ん、奥が深すぎます。


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