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かにの泡ぶく


2007-01-07 アナログな感覚はとても大切。

_ 自作に必要な測定器。

最近メールで、こちらで紹介していたヘッドフォンアンプの回路についての質問をちらほらいただいてます。都度、返信しているのですが意外と多い質問に、『どんな測定器を揃えたほうがいい?』ってのがあります。

難しい質問です。

はじめの一台目はテスターだと、自信を持って答えられるところですがでは二台目は?

二台目もテスターでしょう。

三台目は?

三台目もテスターかもしれません。

というのは半分冗談の半分本気なのですが、テスターはできれば最低二台は欲しいところです。一台はデジタルテスタ、もう一台はアナログテスタ。デジタルテスタは、その構造上、あまりにも粗悪で無ければ安物でもある程度は安心できます。アナログテスタは、出来れば頑張ってですね、少々値が張っても信頼できるメーカーのものを一台買っておくとよいと思います。

自作アンプの電源を入れる際に、私は必ず古典的な針の速いアナログテスタを電源ラインに直列に入れて、電流値を直読監視します。

スイッチ入れた瞬間に、意図しない大電流が流れた場合それは回路の異常を示唆しているのであり、即座に電源断しないといけません。

デジタルテスタだと、電流ゼロ状態からいきなり通電状態になると、オートレンジ切り替え&サンプリングのために反応時間が遅くなりすぐに状態が把握できません。回路に異常があった場合には、この間に回路が昇天しちゃいます。

また、無信号時に消費電流がゆらゆら揺れていたり、なんかふらついているという状態もデジタルテスタでは拾い難い現象ですが、アナログテスタだと針がふらふらしますからすぐにわかります。これらより超低周波域での発振や、回路のどこかが浮遊で不安定になっていたりなどの状態を察知できます。

デジタルテスタはバイアス電圧測ったり、漏れ電流(電圧)測ったりといった測定に使うことが多いです。入力抵抗が数Mオームと非常に高いので安心してプローブ当てられますし、測定値も数字で表示されるので読取誤差ありませんし。

アナログテスタは、入力抵抗が数十Kオームであることが多いですので、常に入力抵抗のことを頭の中で考えながら使う必要があります。そんなこともあって、SANWAのAU-32というアナログテスタも持っているのですが出番は意外と少ないです。デジタルテスタと、普通のアナログテスタ(オートレンジでないもの)という組み合わせが私の場合、いい感じです。

_ テスタの次に買うもの。

そうですね〜、なにがよいんですかね〜。

私の場合、テスターと、自作の測定器でかなりの間、自作していました。テスターは小遣い貯めれば新品でもなんとか買える測定器ですが、例えばオシロとなると、一気に桁が繰り上がって小遣い程度では全く歯が立ちません。ですので仕方なく、自分で工夫して測定器を作るわけです。

はじめに作ったのは、交流電圧計です。正確には、テスターにつけて使うアダプタですね。

オーディオアンプよりも先に、ラジオや無線機の自作からはじめたこともあってまずは数十メガヘルツ程度までの微弱電圧を測定できるものが欲しかったのです。で、2SK30Aのソースフォロワで受けた信号を、ショットキーダイオードで検波し、それを2SK30Aで直流増幅してテスターで読むというアダプタを作りました。これはとても便利で、発振器のピーク調整やタンク回路のピーク調整に大活躍しました。その後、555を使った発振器と組み合わせて、オーディオアンプのゲイン測定や、簡易の周波数特性測定なんかにも使えました。

そのあとは、本当にいろんなものを作りましたが、自作の測定器というのは当然ですが精度も確度も???ですのでね、目安程度にしかなりません。しかし、目安とはいえなにもないよりは遥かにマシでもあり、工夫次第で結構いけるものです。

自作はとりあえずおいておいて、マトモなメーカー製測定器という点で改めて考えてみますと、私がテスターの次に買ったものは、周波数カウンタでした。これも、ラジオ、無線機自作中心ゆえのものですね。アナログラジオの中間周波数を取り出して周波数直読ラジオにするという目的での周波数カウンタでした。ですから測定器というよりは、ラジオの外付けアダプタのような位置づけで電源も+5V or +12Vを自分で用意する必要のあるものでした。中学一年生のころだったかな。お年玉をも動員してやっと貯まった一万円を握り締めて、うまれて初めて一人で乗った国鉄中央線。目指すは高円寺中野にあった「光波無線」(おかしいなぁ。私の微かな記憶では確かに「高円寺」で降りたはずなのですが、今あちこち調べてみるとどうも「中野」もしくは「東中野」のようです・・・うむ)。「ラジオの製作」に載っていた光波無線の広告の地図を見ながら歩く歩く。「この辺にあるはずなのに・・・」と、何度何度目的地周辺をうろついても発見できません。そこにあるのは普通の民家のみ。「もしや・・・」なんと、その普通の民家が光波無線だったのです。

どっから入ったらよいのか躊躇する私。思い切ってそのへんの扉を開けて「すいませ〜ん」と大声出すと、おそらくご主人とおぼしき男性が出てきました。「あの、あの、R5M欲しいのですが・・・」と切り出すと、「はいはい。ちょっと待って下さいね。」と実に柔らかな物腰で対応していただいたのも、今となっては遠い昔の思い出です。

随分話が横道にそれてしまいましたが・・・

その次に買ったのは、オシロです。100MHzのアナログオシロ。私が新品で買った測定器の中では高額な部類に入るものです。

オシロはやはりできれば一台は欲しい測定器だと思います。テスターの次に・・・いや、基本回路が動いたあとは、テスター以上によく使う測定器です。信号波形をダイレクトに観測するということはとても重要なことですが、それを実現してくれるのがオシロスコープです。

ただ、今の時代であればPCの音声入力端子を使って、オシロっぽいことも簡単に出来ますから、これもPCとWaveSpectraを使って、工夫次第でかなりのところまでいけると思います。

でも、もし許せば、オシロは専用機を一台欲しいところです。

PCの音声入力ですと、オーディオ帯域しか測定できませんし、外付けのサンプリング装置をつけたとしても普通は96KHzか192KHzサンプリング止まりですから、観測できる周波数はこの半分の48KHzか96KHzまでとなります。

まぁ、ここまで測れれば通常充分とも思えるのですが、案外そうでもないんですよ。

最近の半導体はかなり高い周波数まで増幅できるものが多いですので、オーディオアンプ作ったつもりが知らない間に短波帯で発振しているとか、なぜかFMラジオにノイズが入るとか、とんでもないところで発振されちゃうことがあります。

回路の要所要所の通過電流を注意深く観察すれば、これら異常を察知できる場合もあるのですがなかなか難しいです。高い周波数まで波形観測可能なオシロを使って、信号ラインにプローブ立てて、無信号時と正弦波入力時の波形を観測すればこれら異常は目で見て即座にわかります。オシロを持っていないころは、無信号時のアンプの出力に例の高周波電圧測定アダプタ繋げて発振の有無を確認していました。

オシロの次は、信号発生器ですかね〜。でも、この信号発生器(SG)も、高性能のものはほんとに高いです。私が新品で買ったものは、低周波用のケンウッドのAG-203Dというもの。使ってみるととても便利なもので、ヘッドフォンして再生試験にも良し、オシロ繋いで波形観測にも良し、周波数特性測定にも良しと、一度使うと手放せません。でもこれでも歪率の測定に使うにはかなり厳しい信号純度なので、まぁ上を見ればきりが無いってことですね。

測定器も、そろえようと思ったらほんときりが無いです。でも、まぁ、揃えられないからって悲観することは全く無く、趣味でやっているわけですから出来るところからやっていけば全然OKだと思います。あとは、工夫次第で相当リカバリーできますし。

実際、テスター二台と、自分の感覚(音が濁っているとか、なんかへんとか、ぶつぶつ音がする等)で相当いけると思います。

気楽に、しかし、真剣に、納得はするけど妥協はしないで、ぼちぼちとやっていきましょう。

本日のツッコミ(全9件) [ツッコミを入れる]
_ トランジスター小僧 (2010-01-13 14:29)

高周波ならデップメーター。低周波なら,低周波発振器でしょう。バイアス抵抗計算に必要なトランジスタ電流増幅率測定器は、最近は上級者向けのテスターに入っています、100メガのオシロの新品の価格は●●万円、はするでしょう、

_ 青木@管理人 (2010-01-13 23:23)

トランジスター小僧さん、ようこそ!<br>ディップメーター懐かしいです。私はお金が無くてトリオのそれが買えずに、必死こいて自作しました。当時6mのSSBでオンエアしていたのですが、近所の(まったく見ず知らずの)OMさん宅に図々しくもお邪魔して校正させてもらったり。<br><br>あのころの時代は、時の流れにも人の気持ちにも、ずいぶんゆとりがあったように思います。

_ やまねこ (2010-09-30 13:58)

時期はずれで恐縮ですが、確認のためぜひご教示下さい。<br>「アナログテスタを電源ラインに直列に入れて、電流値を直読監視」ですが、これは交流電流レンジのあるSANWA AU-32ならではと思いますが、違いますでしょうか。フツーのテスターで可能ならばその方法をご教示下さい。

_ 青木@管理人 (2010-09-30 14:16)

やまねこさん:ごめんなさい。少し説明不足でした。 <br>電源ラインとは、直流になったあとのラインのことです。AC100V側ではありません。よって、普通のDC電流計で測れるラインです。 <br>AC100Vから電気を貰うアンプの場合、整流平滑(安定)化した後のDCラインに入れます。電源部は別途独立単体で動作チェックを行うことになります。<br>AC100V側だと直流電源部自体のアイドル電流や力価の問題があったりで、少し難しいですね。あと、ラッシュ電流にどう対応するかという問題もあります。<br>ほんとはAC100V側も監視できればよいのですが、AC電源使う場合は100V側には必ずFUSE入れますので、電源ラインの致命的な配線ミスなどは、FUSEのカレントリミッタで取りあえず・・・ってな感じです。

_ やまねこ (2010-10-01 22:06)

ご回答ありがとうございました。電源=AC100Vと思い込んでおりました。恥ずかしい限りです。今回、AU-32がアナログながら交流電流を計測できることを知り、興味が湧いてきました。またテスタが増えそうです。

_ 青木@管理人 (2010-10-02 00:10)

AU-32はアナログテスタのクセにテスタ自身の持つ内部抵抗をほとんど気にせず使えるので、非常に便利であることは確かです。<br>やまねこさんおっしゃる通り、AC電流も測れますしね。<br><br>性能面には全く関係ないのですが、でも、サンワと聞けばSP-10Dを思い出すような私のようなヲッサンには、今のサンワのテスタの質感には正直失望します。ま、これも時代ですから、仕方ないかな・・・例え海外生産であっても、テスターなんつう今となってはマイナー気味な測定器をハンドリングしてくれるだけで、感謝すべきなんだよな・・・とも、思います。<br><br>性能面には全く関係ないんですけどね。

_ やまねこ (2010-10-03 21:14)

全く同感です。HIOKIにしても、SANWAにしても精度が上がって性能は向上しているのでしょうが、趣味性(面白味)が無くなってしまいました。ちなみに、私はゲルマニウムラジオの検波電圧を測るために(のみ)テスタを7台も持っています。しかも増殖中なので、病気としか言いようがありません。<br>本末転倒です。あはは。<br>ご回答、ありがとうございました。

_ 青木@管理人 (2010-10-03 23:02)

なんと! ゲルマニウムラジオの検波電圧を測るためのみにテスタ7台とは・・・<br>私もゲルマニウムラジオの解析のためにアナログオシロ買ったような人間です。ゲルマニウムラジオは面白いですよねぇ・・・

_ やまねこ (2010-10-04 07:46)

ご同病でしたか。<br>DC200mV程度の計測のために、テスタの内部インピーダンスと闘っているところです(?)。おかげさまで電流の意識が目覚めました。


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