2011-03-31 外圧がかからないと決断できない日本政府?!_ 福島県飯舘村の被曝放射線量について。今朝未明より各方面で報道されている通り、IAEAから日本政府に対して、飯舘村に避難勧告を出すよう通告がありました。 IAEA事務次長から、「IAEA独自の土壌調査で、飯舘村の放射線量はIAEAの避難基準を上回っている」と指摘があったとのことです。 これに対して本日11時頃の日本政府の記者会見で、枝野官房長官はこれを認め、次のように言いました(概要)。 直ちに健康に害はないものの、長期間居ると健康を害する恐れがあるので今後の推移を注視するとともにモニタリングを強化する。 IAEAに指摘される前に日本は独自に調べてないのかとか、いつも後追いばかりでなにやってるんだとかいう非難はとりあえずここでは置いておいて、飯舘村に住んでいる人たちの被曝線量を計算してみました。 福島県災害対策本部(http://www.pref.fukushima.jp/j/)で公開されている線量計測データを使って、飯舘村のみなさんが実際にどの程度の被曝を受けているか、概算してみます。 測定結果を見てみますと、3月15日の15時から線量が跳ね上がっており、これは同日朝に起きた福島第一原発2号機の爆発のためと考えられます。線量が桁違いに大きいので、3月15日15時以前の値は無視することとします。 素データは上記URLから参照できますのでここでは示しませんが、グラフ化したものが以下の通りです。
3月15日は、15時以降のみ線量積算してますので1日当たり被曝線量が少なめですが、時間当たりの線量強度はほぼ最大値です。その後、だらだらと低下しておりますが、過去の事例から考えるとこのまま同じように線量が下がっていくことは無く、低下率はだんだん悪くなっていきそうです。 昨日の時点ですでに約5400マイクロシーベルトの被曝を受けていることになります。これがどのぐらいなのかと言いますと、いろいろな数値があるのでなんとも言えないのですが、目安としては胸部X線CTスキャン数回(1〜3回)分程度、胃のバリウム透視X線検査2回分程度、胸部X線撮影だと108回分程度の被曝量と同等です。が、注意しないといけない点は、これは外部被曝のみを考慮した値だということです。しかも、医療検査は被曝部位が限られていますから、被曝による全身への影響はさらに低くなる方向にあります。 生活空間線量は全身被曝で、これに加えてさらに内部被曝分も加味されます。その分は大いに悪い方向(=被曝量が増える)に勘案する必要があるでしょう。 空間線量による被曝並びに線量経過だけを見る限りでは、確かに今となってはもはやすぐにどうこうしなければならない状況には無いと思いますが、これは本来であれば、3月15日の夜にも子供には安定ヨウ素剤飲ませて翌日には避難させるべきレベルです。これだけ線量急激に上がれば、精密分析などしなくてもいろんな放射性物質が降り注いでいるってことは誰にだって容易に想像できます。そしたら水は駄目になりますし、内部被曝のリスクも一気に高まります。 IAEAに指摘されるまで、なにをしていたんでしょうかって感じです。 気になるのはIAEAが独自に測定した土壌の線量がいったい幾らだったのか? という点です。この数値はこれを書いている今現在、具体的に出されてないのでなんともそのインパクトが判断できないのですが、土壌が汚染されているということは水も農作物もそのへん一帯が汚染されているということです。経口摂取、吸入摂取による内部被曝が実に心配です。風が吹けば土埃も舞い上がります。 このまま新しい放射性物質が補給されなかったとしても、外部被曝だけで毎日100マイクロシーベルトオーバーで被曝し続ける日々が当分継続しそうです。老若男女を問わずに毎日胸部レントゲンを2枚か3枚か、無意味に撮られているのと同じことです。内部被曝も考慮したらこれの3倍以上の影響もあり得ます。少なくとも、お子さん、妊娠されている女性、これから子供を作る可能性のある男女は、万全を期すべく今からでも避難すべきレベルだと私は思います。 _ 福島県飯舘村の被曝放射線量について-追記(24時15分)。毎日新聞より引用。
<福島第1原発>飯舘村「避難不要」 保安院が被ばく量試算 『同村周辺で最も線量が高い地点の累積線量は50ミリシーベルト』って高すぎですよそれ。私が上記で試算した累積線量は6ミリシーベルト弱で、一桁小さいにも関わらずそれでも危険だと思ったわけですよ。ちなみに、放射線作業に従事している職業人の被曝限度が年間50ミリシーベルトで、もうそれだけ行っちゃっているってことですよね。一般の個人に対する実効被曝線量当量限度は年間1ミリシーベルトですから、放射線作業に関係無く普通に暮らしている人基準で言えば、もう50年分も浴びちゃっているわけです。記事の通り半分だとしても、多いことに変わりはありません(半分というのは希望的観測すぎると思いますが)。 普通に考えておかしいですよ、これ。 もっと読みたい奇特なかたは、↓の読みたい月をクリックしてね。 |
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この記事どう思われますか<br>ttp://tnakagawa.exblog.jp/15158073/
東大病院放射線治療チームのblogですね。<br>以前であればこういう専門家の見解というのは、報道番組とか新聞その他、なんらかのメディアを介してしか得ることのできなかった情報です。それが、いきなり、直接本人達が発信した情報が、そのままなんの加工もされずにこうして一般人の我々が接することができるようになったということはすごく画期的なことだと、思います。<br>ただ、その分、受け手であるこちら側も、その情報内容を充分に吟味して、判断解釈するだけのスキルを要求されるようになったと言えますね。<br>日本人はどうも、学歴とか権威に弱い部分が多々あって、東大病院放射線治療チームが言っている内容・・・っていうだけで全てを鵜呑みにしてしまう人が多そうです。実は他にも、東大病院放射線治療チームがTwitterで発信している内容についてメールで質問を受けたのですが、これについても近々触れてみたいと思っております。<br>誤解のないように補足しますが、鵜呑みにすると危険な嘘を彼らが言っているというわけではありませんよ。仮にも彼らはその道の専門家です。専門家である彼らが直接に情報を発信公開しているわけですから、その内容は正確だと思います。しかし、その正確な内容からどういうことを我々は受け取るのか? という部分については充分な考察が必要だと思っています。
少しじっくり読んでみました。<br>定量的な数値を交えて解説している姿勢は好感が持てます。が、ひとつ重要な点は、「どちら側に立っている人の意見なのか?」ですね。<br>彼らは医学的な知見に基づいて話を進めています。<br>例えば以下に引用します。<br><br>--------<br>医学的には、実効線量250 mSv以下であれば確定的影響はまず見られません。100 mSvの被ばくにより、発がんリスクが0.5%上昇すると考えていますが、それ以下では、はっきりとしたリスクの上昇は観測されていません。<br>非常にゆっくりと被ばくする場合には、瞬時に同じ量を被ばくするよりも、効果が弱まることも想定されます。したがって私たちは、乳幼児も含め、実効線量100 mSvの被ばく量を医学的な線量限度の指標の一つと考えています。<br>ただし、妊娠中の方に対しては、もっと厳しい基準を設けるべきです。専門家の間でも議論はありますが、妊婦の方に安心していただけるよう、妊娠中の被ばく線量限度を10 mSv以下にすべきであると考えています。(国際放射線防護委員会レポート84)<br>--------<br><br>一方で、法律で定められる「一般公衆の線量限度」は、年間1mSvまでとなっています。この点については彼らのblogでもちゃんと触れています。<br>まずこの時点でスタンスが違いますよね。<br>法律で定める一般公衆の線量限度の年間1mSvというのは、「この範囲であれば被曝による健康被害は全く無いと言ってよい」っていう超安全サイドに立った基準です。<br>一方で、彼らは、妊婦さんを除き、乳幼児を含めても年間100mSvまで大丈夫だというスタンスなのです。<br>彼ら自身が100mSvで0.5%発ガンリスクが増大すると考えているわけですから、この程度のリスク増大は「ノー問題」というスタンスなのでしょう。<br>私は放射線医療関係はまるで素人なのでこのへんの解釈の違いについては、(個人的な見解は持っているけれども)ここではコメントしませんが、そこらへんの背景を踏まえて、自分なりに『冷静に』解釈する必要があると思います。<br>0.5%っていうと、200人に1人です。結構多いですよね。日本人は2人に1人はがんになるから発がんリスクは50%。よって0.5%増えてもそれは誤差だとかいう人も居ますが、果たしてそうでしょうか?<br>放射線被曝によるがんの発生は、被曝後20年後から顕著になってくると言われています。( ttp://www.remnet.jp/lecture/forum/07_04.html )<br>そして、<br>ttp://www.fpcr.or.jp/publication/pdf/statistics2010/fig17.pdf<br>に、「年齢階級別がん罹患率推移」のグラフがあります。これを見ると明らかなように、発がんリスクは年齢が上昇するとともに急激に高くなる傾向があります。<br>例えば、「全がん」で見てみます。<br>上記のことを踏まえ、『100mSv受けると20年後に0.5%の発ガン率上昇する』として考えてみます。<br>仮に私(45歳男)が100mSv受けたとして、20年後の65歳に0.5%発がん率が上昇しても、確かにどうってことないです。まぁいいですよ。いままで散々酒を浴びるように飲んできましたし、やばい食い物もリスク承知で食してきましたから ^^)。<br>が、仮に、1歳のお子さんが100mSv受けたとして、20年後の21歳に0.5%発がん率が上昇したら、これは大変なことですよ。このグラフからは読み取ることが極めて困難ですが、21歳のがん罹患率って、累計で10万人中10人ぐらいな感じですよね。これが、0.5%上昇したら、10万人中510人になってしまうわけです。1万人に1人が、200人に1人になるわけです。しかも21歳で。65歳のジジイ(=私の20年後)の世界ではなく、これから働きざかる世代の話です。1歳のお子さんは新陳代謝から考えて、おそらく実際のがん罹患率はもっと上昇するでしょう。<br>これを「ノー問題」としているのが、彼らの根拠なのです。<br>但し、だからと言って彼らの基準が間違っているかと言えば、そうではないと私は思います。<br>医療というものは、そういうものです。万人全てが完治する医療が理想ですが現実はそうではない。例えば、タミフルがよい例ですよね。重篤な副作用が報告されているにも関わらず、服用されるわけです。それは何故かと言えば、その副作用の発生頻度、程度と、得られる効果を考えて、大半の患者に対して効果的であると判断されるから服用されるわけです。<br>これは、医療を提供する側の論理として、私は間違っていないと思います。<br>一方で、そのわずかな率ではあるものの、重篤な副作用を食らった側は悲劇であることも事実です。これは実は確率論では語れないことなんですね。だって、不幸にも重篤な副作用が発生してしまった人というのは、確率に関係なく発生した事実だけがあるわけで、その人にとっては100%なわけです。<br>私自身、過去に10万人に1人しか罹患しないという奇病に罹ったことがあります。罹ってしまった人にとっては確率なんか関係なしに、0%か100%か、なんですよね。<br><br>では、そのわずかな副作用を受ける側の人間にならないためにはどうしたらいいのか? 100mSvを浴びて、発がんリスク0.5%上昇のメンバーにならないためにはどうしたらいいのか?<br>それは、自分が副作用を発生しそうな薬を飲まないようにすることであり、100mSv受ける前に逃げることに他ならないわけです。<br><br>上記でいろいろ書いた通り、私は、彼ら東大病院放射線治療チームが書いていることはおかしいとは思いません。医療を提供する側としてはかなりちゃんとしたことを発信していると思います。具体的数値を示さずに「直ちに健康被害は無い」とかいう意味不明な根拠に基づく発言が一切無く、ちゃんと数字を示して真摯に説明しようとしている姿勢は評価できると思います。<br><br>が、上記に書いた通り、医療を受ける側(という表現は少し適切ではないかもしれませんが)からすると、確率論で切り捨てられてはたまらない事情があるわけで、そこは、各人が、『自分(達)の置かれている状況はどういう状況なのか?』『自分(達)は、なにをされているのか?』ということを常に考えて、自分で判断していくしかないと、思います。
こんなにたくさん返信いただきましてありがとうございます<br>目からうろこが落ちまくりです<br>50%が50.5%になっても大きな差がないから全然問題ないって私もうのみにしていました<br>そういうふうに考えることもできるのですね<br>管理人さんはまるで素人なんてこと、絶対ないと思います。素人じゃあここまで考えが及びませんよ<br>これからは先生、師匠と呼ばせてください!
先生とか師匠ってのは、勘弁してください ^^)<br>ほんと、ただの素人ですから。素人であっても少し調べて勉強すれば、このぐらいは誰だってわかるようになるってことですね。