2011-03-17 放射線についての誤った解釈。_ 胸部レントゲン1回分です。各地の観測ポストの線量が上昇し始めたとき、よく、『胸部レントゲン1回分の放射線量です』なんて説明を耳にしましたが、最近のマスコミの報道を見るに、誤った解釈をしているケースが多々見られます。 また、私のところにもメールで「私の居るxxx市は大丈夫ですか?」「何マイクロシーベルトになったら避難したほうがいいんですかね?」みたいなメールが、かなり届いております。 ここで一度、説明しておきたいと思います。 ただ、私は放射線については完全に素人ですので、間違ったことを書いているかもしれません。間違わないように細心の注意を払って書いてみますが、もし、お気付きの点がありましたらご指摘歓迎です。 _ 被曝量=強さx時間。胸部レントゲンを例にしましょう。一般的に使われている数値として、胸部レントゲン1回あたりに浴びる放射線量を 50[マイクロシーベルト(μS)] としましょう。 もし、貴方が居る場所の放射線量が、0.5[μS/h]とします。この場合、100時間その場所に居ると、胸部レントゲン1回撮影したときと同じ被曝量になるということです。 まとめます。
放射線被曝量 = 放射線強さ x 時間。 です。よく使われる単位 [μS/h](マイクロシーベルト/時)は、1時間あたりそこに居ると被曝する放射線量ということです。 胸部レントゲン1回撮影したときの被曝量[μS]は、被曝放射線総量を表しています。単位に分母がないことからもわかりますね。 もし、貴方が居る場所の放射線量が、0.5[μS/h] とします。ここに1年間住んだ場合は、0.5 x 24 x 365.25 = 4383[μS]で、胸部レントゲン87回撮影したのと同じ被曝量となります。
世界には、1.0[μS/h] を超える自然放射線量を観測する都市、街が沢山ありますが、それらの地域で特別に放射線による健康被害が多いという現象は確認されていないということです。 - 2011年3月19日 08時17分追記。 このへん、最近の報道を見ていると単位が滅茶苦茶に使われているケースが多々あるので、数値を解釈する際には気をつけなければなりません。 最後に、[μS/h]と被曝量の関係が一目でわかる図を作ってみましたので、参考までに掲載します。 いくつかの被曝量基準に対して、ある[μS/h]のときに何時間(何日)そこ居ると被曝量基準に達するかを図から読み取ることができます。 図中、例として臨床症状が出ないと言われている被曝量限界を200[mS]としましたが、これは放射線医学総合研究所から出されているパンフレットから拾った数字です。 _ 外部被曝と内部被曝(直接被曝と間接被曝)。放射線量と被曝についてはここまでの説明でざくっとご理解いただけるかと思うのですが、さらに難しいのが、外部被曝と内部被曝です。これも、現在かなりごちゃ混ぜで扱われているという印象を受けています。 こんな話を、今の時点でするべきかどうなのか、実は私も悩んだのですが煽るわけでもなく楽観するわけでもなく、正しい判断を行うためには事実を正確に把握し、正しい知識を得ることは重要だと思います。 ここをお読みの皆さんで外部被曝と内部被曝の区別がわからない方はぜひ、「外部被曝 内部被曝」でGoogle等で検索して、調べてみてください。 よく聞く『放射線の強さは距離の二乗に比例して弱くなる』・・・すなわち、放射線発生源からの距離が2倍になれば、放射線強度は1/4倍になるということですが・・・という話と、福島より遠く離れた地域で検出される放射線量の増加は、全く違う話なんです。 お願いですから、ぜひ、ぜひに・・・ _ 被災地現場で対応されているみなさん・・・応援することしかできません。今の私には、応援することしかできません。正直、実にもどかしい。 決死の覚悟で現場で対応作業されているみなさん、被災地で救援活動をされているみなさん、心の底から感謝いたします。 _ 被曝量と放射線量について、改めて・・・(3/18 13:27追記)線量というのは、当該地点での放射線の強さを示すもので、単位時間当たりの被曝量を意味します。 水を用いて、例えてみます。
放射線被曝量 = 放射線強さ x 時間 ということです。これを、今、報道でよく耳にする「胸部レントゲン」と「各地の放射線量」に当てはめてみますと・・・ 胸部レントゲン1回分50マイクロシーベルトというのは、胸部レントゲン1回撮ると、50マイクロシーベルトの放射線が身体に貯まりますよということです(すいませんここの「放射線が身体に貯まる」という表現は正確ではないのですが、概念を説明するためにはOKでしょう)。 そして、例えばある地点での放射線量が 0.5マイクロシーベルト/時 だとした場合、これは、その地点に居ると、1時間あたり0.5マイクロシーベルトの放射線を受けますよということです。 よって、その地点に100時間居ると被曝量は50マイクロシーベルトになり、胸部レントゲン1回分となるのです。 さらに、その地点に200時間居れば被曝量は100マイクロシーベルトになり、胸部レントゲン2回分となります。 ですから、「放射線量と胸部レントゲン被曝量とを比較しているニュースはウソを言っているってことなんですか?」というのは、嘘以前に直接比較しようがない数値なんです。 その地点に何時間居るか? という条件を規定しないと、被曝量が出せませんから。 もっと読みたい奇特なかたは、↓の読みたい月をクリックしてね。 |
最新ツッコミ |
ご丁寧な説明ありがとうございます。<br>ニュースを見ていても、確かに放射能の強さについてはよくわからないことが多く、あんまり深くも考えてませんでした。<br>ただ、いまひとつ、ピンとこないのですが、今の各地の放射能を、胸部レントゲンと比較しているニュースはウソを言っているってことなんですか?<br>お手すきのときにも、ぜひ教えてください。
質問ばかりで恐縮ですが、よくテレビで直ちに健康被害は出ないと言ってますが、これはどう解釈したらよいのでしょうか
通りすがりさん、こんにちは。<br>ご質問の件、上に回答しました。また、普段こんな用語を使うことは滅多にないのでよくごっちゃにされちゃうのですが、用語については以下の通りです。<br><br>放射能:放射線を出す能力のこと。<br>放射性物質:放射能を持つ物質。<br>放射線:放射性物質が出す(粒子)線。<br><br>このへん細かいことなんですが、ややこしいですね。<br><br>あと、「直ちに健康被害は出ない」の解釈についてですが、これは非常に難しいです。放射線被曝による急性障害が出るのは、相当強い放射線を短時間に浴びたときです。また、外部被曝か内部被曝かによっても状況は大きく変わります。<br>このへんの話は、放射線の専門知識の無い私が回答できる範疇ではありませんので、ぜひ、放射線を専門に扱う組織等が運営するWeb等で情報を参照されてください。<br>世の中あまりにも大げさというか、ヒステリックなほどに放射線障害を取り上げているWebサイトがありますので、そこは注意が必要ですが、その逆に、あまりにも楽観的に取り上げているWebサイトもありますので、それにも注意が必要です。
ご丁寧にありがとうございます、よくわかりました。
どういたしまして。<br>私も放射線に関してはまるで素人ですが、地震大国日本が原発を持たねばならないという状況に際して、随分昔から独学で原発事故リスクを勉強しています。<br>そのなかで一番怖いなと思ったのは、我々国民自身が、原発リスク・・・すなわち放射線事故が起きた際のリスクについて、あまりにも無知すぎるってことです。もちろん私自身も無知すぎました。<br>日本は世界的に見ても誰もが認める地震大国です。この地に仮に原発を作らざるを得ないのであれば、義務教育で放射線に対する正しい教育をさせるぐらいの国としての覚悟が必要だと思っています。<br>それが出来ないのなら、脱原発です。<br>資源が無いなら無いなりに、工夫すればいいだけのことだと思うのです。
今、NHKを見てたのですがまたいつもの「直ちに健康被害は出ない」って言ってました。<br>教えていただいた計算式で計算してみたら、今日30kmで検出された150マイクロシーベルトだと、1時間でレントゲン3回ってことですよね? 一日いたら、24倍で72回ってことでよいのですか?
胸部レントゲン被曝量が50マイクロシーベルトとした場合、線量が150マイクロシーベルト/時であれば、通りすがりさんの理解の通りです。
マイクロシーベルトについて調べているうちにこちらにたどり着きました<br>すごくわかりやすい説明ですね、ありがとうございます
はじめましてさん、はじめまして。<br>少しでもお役に立てたのなら、時間をかけて書いた甲斐があったというものです。ありがとうございます。