趣味の自作オーディオアンプ:ヘッドフォンアンプ三題
作成:2006年12月31日
最終更新:2009年12月 5日
■ご注意■
ここで紹介している回路図は、私が実際に作った実装状態での回路図をご紹介しています。
例えば、『ここは設計上220マイクロファラッドなのだけど、手持ちがないから47マイクロファラッドで取りあえず実装しちゃえ』で作ったところは、回路図上も47マイクロファラッドで書いてあります。
このような『諸般の事情で』回路定数が変更になったところは回路図上にもその旨注記しておきますので、もし、追試される場合には注記の通りに部品定数を変更されることを強く推奨いたします。
#003 実測特性値公開しました。
#003 極限チューニング方法公開しました。
最大性能を発揮するための調整法です。また、LTSpice回路図も一緒に公開してます。シミュレーションマニアなみなさま、ご利用ください。
2009年11月18日追記。
#003 回路図公開しました。
#003のアンプ部電源デカップリング抵抗値に、誤記がありました。当初0.1オームとなっておりましたが、3.9オームが正しいです。
すでに部品注文されてしまわれたみなさま、本当に申し訳ありません。
2009年11月17日追記。
2007年の春から本格稼動し、いまなお我がメインアンプとして君臨している#003の回路図を遂に公開しました。
都合2年と8ヶ月、2008年と今年は夏場であっても耐久試験を兼ねてずっと使っていますが、トラブルも不満点も今のところ皆無です。
いや〜もうね、一生もうこれでいいじゃん・・・って感じのクォリティーですよ。
さぁ勇気ある同好の志よ、レッツトライ!
2009年11月12日追記。
#001、#002 印象その後
ちゃんとコンテンツとしてまとめたいところなのですが時間がないので取り急ぎここに追記です。
その後も#001、#002の試聴を継続しており、随分と音も聴きこみましたので改めて今日時点での印象をご報告します。
音の情報量、密度という点では圧倒的に #001 のほうが濃いです。SEPP前段の構成が異なるためか、それとも、ゲルマTrの成せる技なのかわかりませんが、とにかく #001 の音は高密度な感じです。先日思うところあって、電源のデカップリングを強化して低域クロストークを改善したのですが、その効果も大きいです。
比して #002 は、ほんと安く簡単に作れますから自作ヘッドフォンアンプ入門用として最適なのは間違いないですが、#002 で入門した人はぜひさらに上のレベルの自作にチャレンジして欲しいです。私の好きな音であることに違いは無いのですが、#001 と聞き比べると物足りないと感じるところがあることも事実です。
#003 は現在鋭意製作中で、取りあえず今のところの最強アンプになる予定ですが、もうすでに #004 の構想もかなり出来つつあります。
#003 はとにかく電力のロスが多いです。これが音の密度アップに一役買っているようには思うのですが、供給電力の大半が熱になってしまうわけですから地球に優しくないアンプであることも事実。
そこで、#004 は、#001 や #002 で使っている電力効率のよいAB級ドライブのSEPPに戻ってですね、しかしAC100Vから電力をもらうことで高い電圧でトランジスタを駆動する路線で考えてます。もちろん発熱も少ないですから、ケースへの実装や設置場所も気を使わずにOKって感じで。
気が向いて時間あるとき、自室で仕事中気分転換したいとき、突然未明に目覚めたときなどに、ちまちま進めてます。ゆっくりで恐縮ですがどうか気長にお楽しみください。
2007年 2月 6日追記。
2006年11月から12月にかけて設計製作したヘッドフォンアンプをご紹介します。
元はといえばかにこむ掲示板で常連サンが私が過去に作ったプリアンプをヘッドフォンアンプと勘違いし、「回路を紹介して欲しい」と書き込まれたことがきっかけになっています。
音楽というものは身体全体で感じるものだという考えを持っていたこともあり、私は過去に一度も、鑑賞目的でヘッドフォンというものを使ったことがありませんでした。窮屈そうでイヤだったってのもあります。
が、上記の書き込みで、「ヘッドフォンアンプなんてミニパワーアンプでよさそうだから、そんな難しくないだろ」と軽く考え「設計してみよっか?」と安請け合いしてしまったことがコトのはじまりです。さらにご興味あれば、このへんの「かにの泡ぶく」をご覧ください。
今日現在、二台が完成しており、一台が鋭意試聴中です。現在試聴中の一台も基本回路はFix.しておりますので、2007年正月休みを使って一気に完成させる予定です。よって、三台全部のコンテンツが揃うのは、2007年1月上旬予定です。
はじめにご紹介する二台は、初号機(#001)であるゲルマTrを使ったものと、二号機(#002)であるシリコンTrを使ったものです。どちらも単三電池8本で動く電池駆動ですが、アルカリ電池を使えば毎日2時間程度使っても一ヶ月程度は動く設計です。百円均一アルカリ電池を使えば、200円/月 のランニングコスト。もちろん外部に電源回路をつけていただいても構いませんが、一度は電池での音をぜひ、お聴きください。
「月200円なら電池のほうがいいや」って思ってしまうハズです。
もし万一、本リソースを読んで、はじめてヘッドフォンアンプを「作ってみようか」って思われちゃったかたがおられた場合、お勧めしたいのは #002 です。なんと言っても入手容易なパーツばかりで構成されておりますし、部品点数も少なく、オーバーオールのNFBがかかっていないこともあって音もかなりイけてます。ヘッドフォンアンプ入門編として自信を持って一押しします。調整箇所もありませんし、部品の選別も不要な設計になっているハズです。シリコントランジスタはVBEが約0.6VとゲルマTrよりも高く、電圧設計に苦労しました。はじめは設計マージンを安全サイドに振りすぎてしまい、K501等のインピーダンスが100オーム越えるようなヘッドフォンだと若干のパワー不足を感じる仕上がりになってしまいましたが、その後、ドライバ段を試行錯誤して電圧スイングも充分取れるようになり、最終的には #001 と比べても遜色ないパワーを出せるようになりました。
#001 はゲルマニュームトランジスタ(しかもコンプリペア)を入手できる人にはお勧めです。ヘッドフォン専用アンプというものを作ったのは、私の自作歴において実はこれが正真正銘の第一号。私がヘッドフォンに嵌るきっかけにもなってくれたアンプです。
SEPP回路の基礎実験をしているとき、いろんなコンプリペアで音の聴き比べをしていたのですが、そういえば大昔のゲルマニュームトランジスタで同番コンプリって持ってたなぁ・・・と思って、部品箱から発掘した同番コンプリ2SB178/2SD178を鳴らしてみたことがきっかけになっています。『こんな昔のゲルマをSEPPで動かすとどんな音が出るのだ?』ぐらいな感じで全く期待せずに実験してみたのですが音を聴いたら驚きでした。背筋に寒気が走るような音。これはすごいということで、手持ちのゲルマTrでコンプリになりそうなものを片っ端から試聴しまくり、一番私好みの音がした2SB22/2SD30で組んでみたものです。
まさに初のヘッドフォンアンプということもあって、回路も若干ごちゃごちゃしていますがこれはこれで一応自分としては納得の落しどころに落ち着いた回路です。
古ぼけたカンタイプのゲルマTrだって、現代の音楽を増幅したいと思っているに違いありません。私は最終的には2SB22/2SD30で作りましたが、2SB178/2SD178の同番コンプリもパワー溢れるパンチの効いた音を出してくれます。
#003 はかなりヘビーなので簡単にはお勧めできないものなのですが、電源をAC100Vから取るようにした純A級シングルのアンプです。今日現在主に電源部の評価中ですので、出来ましたら改めてご紹介したいと思います(2007年1月上旬予定)。
#001 2SB22/2SD30ゲルマTr SEPPヘッドフォンアンプ
うまれて初めて完成したヘッドフォンアンプ。しかし、試聴に試聴を重ね、回路変更何度したかわからないぐらい気合い入れて試行錯誤の上に作り上げたまさに私の初作品です。
ちょっと回路的に意味が難しいところもありますが、ほんの出来心で使ったゲルマTrのパワーも新しい発見でありましたし、お気に入りのアンプです。
この#001アンプは、原音再生という路線とはたぶん異なる音作りだと思いますが、今宵、リラックスしたいひとときに、いつもよりちょっとだけ高級なウイスキィ片手にお気に入りの音楽を聴くなんていうシーンには、このアンプ以外には考えられないぐらい私にとって良い音を出してくれる回路です。
ゲルマTrを入手できた大人の貴方に送る、お勧めのアンプです。
オーバーオールのNFB回路があるので、実装にちょっと気を使います。参考資料として、私の実装をご紹介します。このへんを参考にしてください。
単三電池8本駆動。設計電圧は10Vで、8Vまで電圧降下しても実用的な性能が出せるように設計したつもりです。もし、固定電源に改造する場合は、この回路図の定数のままであれば10VがBestですが12Vでも特に支障はありません。
2SK170(GR)のIdss選別がこの回路の命です。ゼロバイアスで動いている・・・ソースにコンデンサ入れたくなかったのでこうしたのですが・・・ので、Idss選別は必須です。が、まぁ、うるさいこと言わなければ多少のマージンオーバーはOKです。
バイアス生成用の10D-1は、10E-1でももちろん可です。確認しておりませんが、順方向電圧降下が0.6V程度の普通のシリコンダイオードであればなんでも可であるハズです。
実は単三電池新品状態ですと、終段のPcに余裕がありません。ゲルマTrがほんのり暖かくなります。とはいえこの定数で問題ないとは思うのですが、念には念をってことで、もし、お使いのヘッドフォンのインピーダンスが32オーム以上の場合は、エミッタ抵抗の10オームを、15オームにしてもらえるとより安心です。
回路の無信号時電流は、片chあたり18mA前後です(ステレオでこの倍)。内訳は、初段2SK30ATMに0.7mA前後、2SK170に4mA、SEPPアイドリングに13mA弱という感じです。
#002 2SB562/2SD468シリコンTr SEPPヘッドフォンアンプ
#001 は、出来心でゲルマTrに走ってしまいました。とにもかくにもなんせ入手困難(でも努力すれば不可能では無い)なデバイスです。#002 は、#001 で初めてヘッドフォンアンプを作った経験を活かし、かつ、今現在誰でも容易に入手可能なデバイスを使い、さらに、再現性をも重視するという思想で設計したアンプです。
全く無調整で、このまま作れば設計性能が得られるハズ(但しトランジスタのランク、クラス指定は厳守のこと)。
とはいえ、設計思想は筋が通ってます(自分で言うか ^^))。オーバーオールのNFBは無し。2SK30ATMでいきなり出力に必要な電圧スイングを得て、hfeがある程度確保できるTrペアでSEPPドライブ。ですので、2SB562/2SD468のクラスはCが必須です(普通はCが売っていると思います)。
音はまさにCoolな音って感じです。実に客観的な音を出してきます。#001 と比べてどうかといわれますと、比べようが無い音。餃子としゅうまいどっちが好きか? あるいは、日本酒とウイスキィどっちか選べと言われてそのどちらもが無理なように、どちらも良い音です。(その後印象が変わってます。2007年 2月 6日の追記をご覧ください。)
タンタルコンデンサは怖いですからね、本当は16Vで平気なはずですが、念のためにできれば35Vをお勧めします。でも、私は手持ちの関係で16Vで作りましたけど。
2SK30ATMのソースに入っている47マイクロファラッドの電解コンデンサは、手持ちの部品の関係でこの値になっておりますが、ここは、220マイクロファラッド以上に換装されるほうが、より良いと思います。この定数のままですと、低インピーダンスのヘッドフォンを繋げた場合、低域の落ちが早めに始まっちゃいます。さらに、ここの500オームは、一般の系列には無い数字なので、510オームで全然OKです。
回路の無信号時電流は、片chあたり10mA前後と、#001 に比べてかなり省エネです(ステレオでこの倍)。内訳は、2SK30ATMに2mA、SEPPアイドリングに8mAという感じです。
このアンプはコストパフォーマンスが素晴らしく良いと思います。全部品をサトー電気で集めた場合、ステレオ分でケースと電池除いて2000円でお釣りがきます。作るのに手間はかかりますが、このコストからは考えられないような音を手に入れることができます。
実装はこのへんをご参考に。
#003 2SC708H/2SD325ダーリントン シングルA級ヘッドフォンアンプ
■注意■
#003は、#001や#002に比べるといろんな意味で危険です。きっちり作ればもちろん危ないものではありませんが、家庭用コンセントのAC100Vから電力を取るうえに、純A級動作のためアイドル電流もドボドボ流れます。重要部品の発熱もあり部品実装上のノウハウも必要です。
特に電源回路は絶妙なバランスで成立していますので、指定部品のスペックは厳守してください。
安物でもいいのでテスタは必須です。電圧チェック無しで#003を製作稼動させるのは自殺行為です。#001, #002のように無調整で動くようなものではありません。
もし追試されるかたがおられるならば、上記のことを充分にご留意の上、心して臨んでください。
#003のアンプ部電源デカップリング抵抗値に、誤記がありました。当初0.1オームとなっておりましたが、3.9オームが正しいです。
すでに部品注文されてしまわれたみなさま、本当に申し訳ありません。
2009年11月17日追記。
原点に戻って、最近では滅多にお目にかかれない古典的なシングルA級アンプを作ってみました。
結論から言いますと、まさに『驚きの音』です。素晴らしい・・・いや、素晴らしいというより、無色透明って感じでしょうか。もうこれがあればヘッドフォンアンプ作らないでいいんじゃね? と思えるほど好みの音です。事実、今、この記事を打っているのは2009年11月12日ですが、#003完成後この3年近くの間ず〜〜〜っと、#003で一度も不満を感じたことはありませんでした。
しかしこれを作るには上でも触れましたとおり、相応の覚悟が必要です。
ここではこれを追試されるという物好きなかたに向け、成功へ一歩でも近づくべく思いつくことを書いてみたいと思います。と言っても単純な回路ですから、電子回路の基礎知識をお持ちであれば製作難易度はそれほど高くありません。
回路の特徴として、『電源電圧を安定化していない』という点が挙げられます。すなわち、アンプ部の電力消費による電圧降下で電源電圧をバランスさせるという恐ろしい仕様です。しかしながら#003は純A級。無音時であっても大量のアイドリング電流が流れております。また、ヘッドフォン駆動程度の電力であれば信号出力時の消費電力も無音時の消費電力もそう大差なく、結果的に非常に良好なバランス状態が維持できるという仕組みです。私はスイッチング電源の音というのが好きでなく、#001、#002を電池駆動に拘ったのはその点にもあるのですが、この#003のプリミティブちから技東京電力依存電源回路はアンプ部純A級であることと相まって大変素性のよい、自然な音を出してくれました。
部品表をこちらにおきました。今回は、細かい定数の部品が多いですので手書き図面からだと判読ミスが生じる可能性があります。こちらの部品表と照らし合わせて、部品の定数を間違わないようにくれぐれもご留意ください。
■製作上の注意点■
電源トランスは必ず菅野電機研究所のSP-2005を使ってください。
#003の電源回路は上述の通り電圧安定化回路を持たないため、電源トランスの二次側内部抵抗を含めた回路全体で電圧のバランスを取っています。同じ20V0.5Aのトランスであっても銘柄が異なると、電圧降下の具合が変わってしまう可能性があります。どうしても別のトランスで作る場合は、最後に説明する各部の電圧チェック値になるように電源部のリップルフィルタのセメント抵抗値を変更する必要があります。
電源部に使う 2.2K/2ワットと、8.2オーム/5ワット は、必ずセメント抵抗を使ってください。
アンプ部に使う 62オーム/5ワット も、必ずセメント抵抗を使ってください。
ワット数の指定も厳守です(指定ワット数より大きいぶんにはOKです)。
2SK30ATMのランクは必ずGRを指定すること。
GR以外だとこの定数では本来の性能が出ません。また、ドレイン電流を調整する気合いがある人は、2SK30ATM-GRのドレイン抵抗を 1.5〜3.0Kオームの間で可変させてみて、ドレイン電流が 0.7mA前後 になるように調整してください。だいたい2.2Kで0.7mA前後になるハズですが・・・
電源部に使うセメント以外の抵抗器はワット数さえ守ればなんでもOKですが念のために酸化金属皮膜にしておいたほうが安心です。
アンプ部は、セメント以外の抵抗器は普通の1/4ワットタイプでOKですが、せっかくの純A級ですので金属皮膜を奢って見栄をはるのもいいかもしれません。私は金属皮膜でキめてみました。
電解コンデンサは、電源トランス後にある平滑用の2200と3300は50Vですが、それ以外は全部35Vです。35Vが無い場合は、35V以上で選んでください。
アンプ部の出力コンデンサの10マイクロは、タンタルコンデンサ指定です。
くれぐれも極性を間違えないように注意ください。間違えると火達磨になります。また、同330マイクロは、音質にダイレクトに影響します。なるべく高級なものをお勧めします。上を見ればキリがありませんが、そこそこリーズナブルななかでの私のお勧めはエルナーのRFSです(今日現在サトー電気で330マイクロ35ボルト欠品ですので次候補としては470マイクロ50ボルトになってしまいますが、504円/個です)。
出力コンデンサ同様に、音量調節用のVRも音にダイレクトに影響します。
これもなるべく高級なものをお勧めします。最近Aカーブ2連のVRの入手が難しくなってきました。回路上では50Kオームとしていますが、前段に相当特殊なものを接続しない限り、このVRは10Kオーム以上あれば問題ありません。10Kオーム以上のVRで、入手可能ななるべく良質なものを、お使いください。私は今回、アルプスのRK27の250Kオーム2連VRを使いましたが、非常に良いです。秋葉原で900円/個ぐらいで入手。
アンプ部の62オームセメント抵抗は、相当アグレッシブな設定値です。
ちょっとした部品のバラつきで場合によっては危険な値になり得ます。より安全を取りたい場合は、82オーム/5ワットに変更してください。というか、細かい部品定数の試行錯誤調整をしたくない場合は、82オームのほうがお勧めです。82オームでも充分に性能を発揮します。
アンプ部の出力Tr(2SD325)には放熱器が必要です。
写真のごとくの小さいやつで大丈夫ですが、必ず付けてください。
動作時温度ですが、アンプ部62オームセメント抵抗は90度ぐらい、2SD325は放熱器付けて60〜70度、電源部の8.2オームは60度ぐらいになります(赤外線放射温度計で計測)。アンプ部の62オームセメント抵抗は、82オームにすると70度ぐらいです。
90度は指の先でちょんちょんって触ってみて「あちっ」って感じ。70度は指でじーっと掴んでいると数秒で「あちち」って感じ。60度は熱いけど普通に数十秒持ってられるぐらいの温度です。ご参考までに。
整流用ブリッジは、耐圧100V、1A以上のものであればなんでもOKです。
回路図中太線で引いてあるラインには、大電流が流れます。なるべく太い線で、かつ、最短ルートで配線するように心がけてください。当然ですがGNDラインにも大電流が流れますので、GNDラインも配線抵抗に充分配慮してください。
AC100V側に0.5A以下のヒューズを必ず入れてくださいね。
0.1マイクロぐらいの積層セラミックをB+ラインとGNDの間に適宜入れてください(実装写真例の青い部品がこれです)。
スパークキラーは、あってもなくても構わないのですが私は念のためにいつも入れています。抵抗とコンデンサが一体モールドされた部品で、電源トランスのAC100V端子に直付けしてます。
アンプ部の62オームセメント抵抗は90度以上になります。電解コンデンサは熱に弱いので、62オームセメント抵抗(及び2SD325放熱器)周辺は充分に空間を取ってください。部品実装は、下に掲載した写真を参考にされてください。
近所にパーツ屋さんが無い人で、アンプ部の62オームをそのままで決行しようと考えてる人は、調整に備えて82オーム5ワットのセメント抵抗を2個、あらかじめ買っておくほうがいいかもしれません(順調であれば無駄になっちゃいますが)。
実装基板は、耐熱性の面からガラエポを強くお勧めします。
■実装完了後の動作チェック■
電源部とアンプ部のBライン接続は、最後の最後まで行わないでください。また、電源部の平滑コンデンサにはかなりの量の電荷がチャージされます。アンプ部を接続するまでの間は、AC100Vを断してもすぐには電荷は放電されずにしばらく残ってますから、端子を短絡させないようにくれぐれもご注意ください。
何度も何度も、配線に間違いがないかをチェックしてください。純A級は無音時にも大電流が流れますから#003の電源回路は強力です。配線ミスがあると即昇天に繋がりますので、くれぐれも慎重にチェックされてください。
次に、電源部とアンプ部を切り離した状態で、異音や異臭がしたら即電源オフできる体制を取って電源部だけを作動させてみます。※1の電圧が30〜32VになっていればまずはOKです。次に、※2の電圧が、※1より低ければ、これもOK。
次に、テスタを電流計測レンジ(1AもしくはAUTO)にして、電源部とアンプ部片chのみをテスタであたってどのぐらい電流が流れるか測定します。150〜170mAぐらいならOKです。このとき、あまり長時間電流を流さないでください。アンプ部は両chが接続されて設計電圧値になるような回路だからです(片chだけだと少し流れすぎる。でもまぁ大丈夫な範囲内ですが)。もし200mA以上流れたりするようなことがあったら実装ミスです。直ちにプローブを外して電流断し、AC100Vも断してアンプ部の実装を確認してください。
両chとも電流値が正常であれば、AC100Vを断してしばらく放置の後、電源部とアンプ部両chを接続します。
慎重に電源を入れて、各部の電圧をチェックします。
※1:24V前後
※2:18V前後
※3: 9V前後
上の値は終段のエミッタ抵抗が62オームのときの値。ここを82オームで作った場合は、各々数V高めに出ます。
終段エミッタ抵抗82オーム時は ※1:25〜27V、※3:10〜11V であればOKです。
となっていれば、OKです。そのまま10分間ぐらい通電放置後、アンプ部の62オームセメント抵抗器が90度ぐらい(82オームの場合は70度ぐらい)になっていれば正常。チェック終了です。
■部品実装参考写真■
左から、電源部(電源トランスはシャーシ上部)、アンプ部、スパークキラー外観写真 です。
電源部の整流ブリッジと巨大平滑コンデンサ、セメント抵抗は、ラグ板に実装しました。トランジスタによるリップルフィルタ回路が、ガラエポ基板に実装されています。B+ラインは太いビニールケーブルでシャーシ上部にあるアンプユニットへ供給されています。
アンプ部の部品配置は、入力と出力を遠ざけて不慮の発振がおきにくいレイアウトにしています。62オームのセメント抵抗と出力トランジスタ付近は熱くなりますので、周囲に充分な空間を確保します。
出力コンデンサは、オーディオ用の少し高価なヤツを奢ってみました。電解コンデンサ類は消耗品(5年ぐらいで要交換)ですので、将来取り外しやすいように実装しておきます。
最近では珍しい部類の部品に入るかな? と思って、スパークキラーの外観写真を参考までにおいておきます。
また、以下の かにの泡ぶく も、ご参考までにご一読をお勧めします。
2006年11月9日 音量調節用VRについて。
2007年1月9日 #003の設計思想。
2007年1月11日 #003アンプ部音だし1stインプレ。
2007年1月25日 #003電源部。
2007年3月11日 #003バラックテスト。
2007年4月3日 #003完成。
■電圧が期待値にならないときはどうする?■
ぶっちゃけ、低めに出た場合は大きな問題は発生しません。私が使っているAKGのK501というハイインピーダンスタイプのヘッドフォンを充分に駆動するため、電圧スイングを極限まで確保するように設計してありますので期待値の1割ぐらい電圧が低くなっても全然大丈夫です。
問題は、高めに出た場合です。今回はかなり尖った定数にしてますのでこれより高くなると安全マージンが急激に減っていきます。キモは※3点の電圧で、ここが10V超えるとちとまずいことになります。ケースバイケースで対応が異なりますので、もし、※3点の電圧が不運にも10Vを超えてしまった場合、また、8Vより低いなんてときは、※1〜※3の電圧とともに私までご連絡ください。
■指定部品が手に入らない場合どうする?■
2SK30ATM (GR)に関しては、この定数のままですと代替品はありません。根性で2SK30ATM (GR)を入手してください。
2SC708や2SD325、2SB511はぶっちゃけ同じような定格であれば、なんでもOKです。私もたまたま手元にあった石で作ってみたって程度のものです。回路の性質上、2SK30ATM (GR)以外の石の性格は出にくいのではないかと、思います。あ、でも、2SC708は性格が音に表れるかな?
2009年11月23日追記:
終段Power TRの性格は出にくいのでは・・・と上で書いたのですが、気になったのでバラックで実験してみました。したらば石が違うと全然違う音になりました。いや〜、なんでも実際にやってみないとわからないものですな。
シリコン vs ゲルマとかならそりゃ違うだろうとは思っておりましたが、同じシリコンに換装でも、バイオリンの音の表現ががらりと変わったりして面白いです。こんだけアイドル電流どぼどぼ流して純A級シングル動作のエミッタフォロワでも随分石の性格が出るもんだなぁ・・・ と、新発見です。
PA用を使う限り、どの石もいい音で鳴ってます。安心して換装してください。但し、2SD325の代替は必ずPA用にしてくださいね。もちろん、新発見を求めて石換装遊びをするのであればこの限りではありません。
電源部のTrは、何を使っても同じ音・・・私には差異が判別できませんでした。
参考までに代替候補の探し方ですが:
2SC708:汎用小信号増幅用でOK。2SC1815でも大丈夫(実験済み。音はおとなしく上品?になる)。
2SD325:Ic:1.5A、Pc:10W以上のNPN型のPA用ならなんでもOK。2SD361とか?
2SB511:Ic:-1.5A、Pc:10W以上のPNP型ならなんでもOK。
2SD325はサトー電気でも今日現在残3個と、ついに絶滅しそうです・・・2SD361はまだまだありますので、今後は2SD361ですかね〜
#003で使っている部品は、2SD325以外、主要部品は電源トランス含めて全てサトー電気さんで調達可能です(スパークキラーと高級VRは無理そう・・・)。サトー電気さんは私はかれこれ小学生のころから30年以上利用させていただいているお店で、とても丁寧親切なお店です。小学生のころは川崎店、今は小机店、行く暇が取れないときは通販を利用していますが、レアな部品を1個から通販してくれるいまどき大変貴重なお店です。
所謂昔ながらのパーツ屋さんという風情のお店ですから、いまどきのWeb通販と比べるとはじめて利用するにはかなり勇気が要るかもしれません。でも大丈夫。私も何度も利用してますし、トラブルがあってもすぐ対応してくれます。
こちらに、サトー電気通販はじめの一歩 という頁を作りました。どうぞご覧ください。
■極限性能を発揮させるために・・・■
■ところで特性は?■
#003特性測定。あんまし定量数値を云々してもどうかとは思いますけどね、でも、されど、測定値。エンジニアであれば自分で作ったものの定量特性は気になるものです。
■どうしても2SK30ATM-GR以外の石を使いたい■
だめです。なぜなら、#003は私が大好きな2SK30ATMのために作ったようなものだからです ^^)
でも、ヒントだけ、#003極限チューニング法の最後のほうに付記しました。正直言って勝手に設計変更できるだけの実力が無い人には、お勧めしません。
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