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2004年10月19日夜:「放射線やらゾーンシステムやら・・・」



「あおきさ〜ん、鳴りましたか?」

全然これっぽっちもかすりもしませんっ!   あ、いえ、もちろん鳴らないんでいいんですけどね。鳴ってもらったら困るんですけどね。多分この程度の精度のものが(誤動作でなく)鳴ったらおそらくもうその時点で速攻ヨウ化カリウム一気飲みしてシェルター避難しても無駄かもしれないぐらいかなりまずいんではないかと思うので、鳴らないことが幸せなんです。 がっ、こういうものをいざ手にしてしまうと、心のどこかで、「鳴らないかな」いえいえなんでもないです独り言です・・・みたいなもう一人の自分がいることも事実なわけで・・・

毎日毎日カチカチ言うだけのこいつをいつも持ち歩きながら、日々暮らしている今日この頃です。ちなみにひとつは自宅のリビングの天井から吊るしてあって、「万が一にもこれが鳴ったらすぐに家中の窓全閉、外気ダクト全閉、24時間換気を停止し、コードレス電話持って風呂に篭城してから俺の携帯に電話しろ」と家内には言ってあります。

でもねぇ、こう見えても私、一応、エンジニアの端くれなんです。やはりエンジニアとしては、「人の話鵜呑み、仕様書丸呑み」では無く、可能な限り極力、自分自身の手を使って、そして自分の目で、自分の耳で、検証してみたいと思うのはこれはもはやもって産まれた本能なのです。いちおうテストモード(冷蔵庫で冷やして外に出す)で鳴らすことはできるのですが、そんなんじゃなしに、ちゃんと放射線で鳴らしてみたいじゃないですか。しかしこいつが鳴るのは、1mSV/H(いちみりしーべると/時間)以上の強さの放射線。そんなのそのへんにあるわけありません。

う〜ん、しばらく考えてみます。



簡易ゾーンシステム

モノクロファインプリント(白黒写真ですね)の世界には、ひとつの方法論、撮影手法として、ゾーンシステムってのがあります。

今年の3月に今の新居に越してきたのですが、そのときに、引越しのために本棚とか机の中とか、そのへんを整理していたら、太古の昔のいろんな懐かしい(やばい、危険な、いまさら見てはイケナイようなものまで ^^))資料が大量に出てきました。そのなかのひとつに、私が過去に、ゾーンシステムのサブセットを自分で確立したときの手順書がありました。1993年11月の日付のあるその手順書。今から11年も前の話。若かりし日に、完全に自分用に書き残したメモ書きであるがゆえにこんなところで白日の下に晒すのはまさにこっぱずかしい限りなのですが、やっていることは結構まともなので参考までに(また自分のための記録という意味もあって)ここに公開します。冒頭の文なんて、ほんと、お恥ずかしい限りです。

当時私はNIFTY-Serveで「我楽思案」というハンドル名で写真フォーラムに参加してました。省略形は「我楽」です。で、当時、自分で白黒のネガ現、プリントをやっていたのですが、その自室兼暗室を「ラボ我楽」と呼んでました。

まぁ上記の内容をざっと読んでいただければなにをしているのか、なにをしようとしているのかは理解していただけると思いますが、簡単に説明すると:
撮影 → ネガ現像 → 印画紙露光 → 印画紙現像 → 階調画像生成
という処理系において、撮影時、すなわちカメラでのネガへの露光量と、そのときに得られる階調画像(*1)の関係を定量化し、思ったとおりの画像濃度を得ることができるようにする。
    *1:ここでいう階調画像とは、ネガ上に焼かれる画像ではなく、上記プロセスの最終成果物として得られる印画紙上に生成される画像・・・すなわち写真としての階調画像のことを指す。
    2004年10月20日補足。かにこむ読者からいただいた質問への返答。

ということです。そのためには、変動要因である「ネガ現像」「印画紙現像」のプロセスを可能な限り再現性の高いオペレーションとし、その上で系のダイナミックレンジを把握し、目標濃度を得るために必要な露光量(実効感度)を求める・・・ということをしたわけです。で、目標濃度より明るい部分、暗い部分の再現は、印画紙の硬さ(号数)を変えることで調整するのです。

現像という行為は化学反応で、現像時間はもちろんですが、気温、湿度、現像中の攪拌のしかた、振り方などちょっとしたことですぐに現像状態が変わってしまいます。そこではじめに、再現性ある現像結果を得るために、現像プロセスを極力定量化するようにしました。

で次に、その定量化したプロセスで、実際に使っているネガの感度がどのぐらいになるのか、実際にカメラで均一輝度面を撮影して、現像して目標濃度を得ることのできる感度を求めているのですね。
当時はブローニ版で写真撮ってまして、その関係から少しでもブレに有利なようにネオパン400プレストというネガを好んで使っていたのですが、ISO400のフィルムが、ラボ我楽で実際どの程度の実効感度になるのかを実験で求めるのです。上記公開資料にはこの実験結果は載せてませんが、確かISO360ぐらいになったと記憶してます。結構いい線ですよね。

で、引き伸ばしでの現像プロセスも決めておいて、軟調から硬調まで、月光1号から3号までの印画紙でグレイスケールをそれぞれ焼くんです。実効感度から、絞りを前後に振って、焼く。すると、グレイスケールになりますよね? そのグレイスケールを持って歩いて、あるシーンを撮るときに、あそこを目標濃度にすると、ここはこのぐらいの濃度になるんだなって、考えるんです。「あそこは飛んじゃうな」「あそこはつぶれそうだけど、2号で焼けばぎりぎり残るかな」みたいな感じです。シャッターを切るときに、最終成果物であるプリントがどういうふうになるのか、月光何号を使ってどうするのかまでがイメージできるんです。
しかし世の中そう簡単ではありません。このグレイスケールが、なかなか実写と試写で合わなくて、何度も作り直し、焼き直しするんですよね。なんせアナログなリアル銀塩写真の世界です。この実験にはたいそうな時間と労力がかかりますが、そんなことよりも自分のイメージを写真にしたい気持ちのほうが遥かに強い。ほんと徹夜で焼いてた時もありました。

で、こんなことを何度かやっていると、ある日あるとき、頭の中にグレイスケールが自然に出てくるようになるんです。

私にとっては大変に懐かしい手順書だったのですが、これって、今のデジカメの絵作りと基本思想はまるで一緒ですよね?

ネガのベース濃度を測ってプリント時の印画紙露光時間を決めるところなんて、まさにダイナミックレンジを測定しているわけで、ネガのベース濃度はいうなればCCDのオプティカルブラックです。目標濃度は、まんま目標輝度だし、月光何号ってのは、ガンマを立てるか寝かせるか。

デジカメのいいところは、デジタル演算は100%の再現性がある点です。気温低いと感度下がるとか、一回余計に現像タンクを振ったから濃度が変わるとか、そういうことないですもんね。

でも、試写と実写でまるで合わないのは、デジタルもアナログも一緒です。

だからこそ、楽しいのですが。

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