趣味の自作オーディオアンプ:ヘッドフォンアンプに要求される出力についての考察
作成:2007年 1月 2日
初のヘッドフォンアンプである #001 を作ったとき、その最大出力をどのぐらいにすればよいのかという点については、実はあまり論理立てて考えておりませんでした。
市販のヘッドフォンのスペックを見てみますと、出力音圧レベルはざくっと、90〜98 [dB/mW] 程度。すなわち、1mW で 90dB 以上の音圧を生じるとなっています。例えばウチにあるバックロードスピーカーシステムの能率は業務用のPAスピーカーユニットを使っていることもあって 100 dB/W 近い高能率ですが、これに 1KHz / 1W の正弦波ぶちこんだら間違いなく5分以内に隣近所から怒鳴り込まれます。今までの経験から、通常音楽を鑑賞するにおいては、実効 100 dB の音圧レベルを確保できる出力があれば充分であると思っており、そのためには 1〜5W 程度の出力が『良質に』得られるパワーアンプがあれば全く問題ないと考えております(この『良質に』が問題でして、1W の良質な出力を得るために、最大 100W のパワーが必要になるということもそのアプローチによってはあるわけです)。
これらより仮に 90 [dB/mW]のヘッドフォンであれば、100dB の音圧レベルを得るためには 10mW の入力があればよいということになります。念のためにさらに余裕を持って 30〜100mW 程度の最大出力を目標に作れば充分でしょう・・・と、考えました。
実際 #001 は、100オーム負荷で最大出力 36mW のパワーを得られる仕上がりになりましたが、そのパワーはK501を駆動しても全く問題ない余裕あるものです。
しかしながら実際問題として、ヘッドフォンで音楽を聴く場合、一体どのぐらいのパワーが必要なのか? ということは一度は自分なりにきっちりしておきたいなと思って、2006年12月14日に実験、測定してみたのです。
ここではその結果を、参考までにご紹介したいと思います。
ヘッドフォンで音楽を聴く際のヘッドフォン入力パワー実測結果
オペレータ:俺
音楽ソース:CD
測定方法 :
CDで複数のジャンルの曲を、それぞれ「普通に聴く」「気合い入れて聴く」「勘弁してウルサイ」の3つのシーンに該当するレベルに音量VRを調整し、VRをそのままでテスト信号が記録されているCDに入れ替え、1KHz正弦波トラックを再生し、そのときのヘッドフォンに印加されている電圧をオシロ管面読み。これよりそれぞれのシーンでの 0dB 信号レベル(CDに記録可能な最大信号レベル)を得る。これから、アンプの出力電力(ヘッドフォン入力電力)を求める。
普通に聴く:普通に聴いている感じの音量。開放型ヘッドフォンだと少し大きめな外部の音が聴こえる。
気合い入れて:かなり真剣に鑑賞モード。わずかな音も逃さないために大きめな音量に設定。目を閉じていると外部でなにがおきてもわからないぐらい。
勘弁して:15秒も聴いていると妙にイラついてきてガマンできないぐらい大きな音量。
測定ヘッドフォン:
AKG K501(120オーム)
ダイソー\210-ヘッドフォン(32オーム)
結果:
市販の音楽CDに記録されている音楽を、それぞれのシーンに応じた音量で再生したときの 0dB 信号レベル。
| ダイソーヘッドフォン | AKG K501 |
----------+----------------------+----------------------+
普通に聴く| 1.3 Vp-p / 6 mW | 2.5 Vp-p / 6.5 mW |
----------+----------------------+----------------------+
気合い入れて| 2.0 Vp-p / 15 mW | 3.65 Vp-p / 13.9 mW |
----------+----------------------+----------------------+
勘弁して| 4.2 Vp-p / 69 mW | 6.0 Vp-p / 37.5 mW |
----------+----------------------+----------------------+
考察:
上記に示した数値は、あくまでも 0dB 信号レベルであり、通常市販されている音楽CDにはここまで大きな信号は記録されない。0dB ということはすなわち最大レベルであり、飽和していることを意味するからである。記録最大レベルは通常 -3dB までに押さえられている。すなわち、「気合いを入れて」聴いた場合に、市販の音楽CDから出てくる信号レベルは、上記表のそれぞれ1/2のパワー(「普通に聴く」の 0dB 信号レベルよりほんの少し大きいぐらい)ということである。
それらを踏まえて改めて結果を見てみると、ヘッドフォンアンプの出力は、10mW 程度の良質な出力が得られれば充分使用に耐えると考えてよいと言える。
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