■ATSViewer.exe
最新版:ATSViewer_021.zip(1,011,271 Bytes)(2012年 5月 1日公開)
■対象ユーザー
ATOMTEX社製AT1320Aのatsファイルを扱う人で、Windows PC をお使いのみなさん。
本アーカイブ中に、いくつかサンプルのatsファイルを入れてありますので、AT1320Aを持っていなくても、ダウンロード後にすぐ遊べます。「ベクレルモニタのスペクトルってどんなもの?」という興味をお持ちのみなさんも、お気軽にダウンロードして遊んでみてください。実際自分の眼で見てみると、面白いものですよ!
■なにするツール?
もともとは私が、YCRMS横浜市民測定所で使っているAT1320Aの測定結果の解析のため、自分用に作ったツールです。公開に先立って、エラー処理を強化したり、少し見栄えを整えたりしました。
ATOMTEX社製AT1320Aで放射性物質測定すると生成されるatsファイルを読み込んで、スペクトル表示します。よって、AT1320Aのatsのスペクトルを見てみたいな~ というニーズのお持ちのみなさん向けのツールと思われますが、上でも書きました通り、atsファイルさえあれば遊べますので、測定所で分析を担当していないかたもぜひ、お気楽に遊んでみてください。
定量分析機能はありません。スペクトルを目視で定性観察することを目的としています。怪しい測定結果があった際にスペクトル表示して、『これはヤツが居るのか、あるいは天然核種か、K-40のコンプトンか・・・はて?』などと悩みながら眺めることを想定しています。
■誰が作ったの?
YCRMS横浜市民測定所でボランティアで測定結果分析&技術サポートをしている私(かにこむ 青木)が、スペクトル分析するために自分用に作ったものです。
なお、ATSViewerは、文字コード変換にnkfwinを利用しています。往年の使いやすい便利なツールをメンテナンス、公開してくださっているみなさんに、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございます。
■ライセンス条件
みなさんどうぞご自由にお使いください。営利、非営利を問わず無料でご自由にお使いくださって結構です。「使っているよ」メールをいただいたみなさんには、バグ発見やバージョンアップのご連絡をさせていただきます。しかし、ご連絡は必須ではありません。無断で使っていただいて結構です。
再配布についてはご相談ください。
■免責
ATSViewer.exe は現状の状態のまま、なんら保証なしで提供するものです。ATSViewer.exeを使ったことに起因するいかなる結果にも、作者並びに他のすべてのみなさんは誰も責任を取れません。ご自身のリスクでお使いください。ただし、バグレポート、ご要望ご感想ご苦情は大歓迎です。特に、バグについては可能な限り迅速に対応させていただくつもりです。ご要望については可能な限り前向きに検討させていただきます。
ご感想は励みになります。ご苦情については謙虚に勉強させていただきます。
■使い方
ダウンロードはこちら:ATSViewer_021.zip(1,011,271 Bytes)
Windows 上のストレージのどこか適当なところに本アーカイブを解凍します。レジストリは一切いじりません。解凍場所にアクセス権限があればどこに解凍していただいても動きます。
使わなくなったら、解凍したアーカイブ一式をゴミ箱行きにしてください。簡単です。
解凍したら、ATSViewer.exe を起動してください。このようなウインドウが表示されます。
大きなモニタを使われているかたは、ウインドウを大きくするとスペクトルが見やすいです。一度大きくしたウインドウサイズは、次回起動時に覚えていて同じ大きさで表示されます。
言葉で説明するとごちゃごちゃとややこしくなってしまうのですが、極めて簡単に使えるように作ったつもりですので、まずは動かして遊んでみてください。
サンプルats フォルダの中に、いくつかatsファイルが入っていますので、どれでもいいのでウインドウの中にファイルを落としてみてください。スペクトルを表示するハズです。慣れるまでの間は、1スペクトル表示で、いろいろ遊んでみることをお勧めします。「測定スペクトル」「バックグラウンド」「[測定] - [BG]」を切り替えてみたり、フィルタを使って表示の変化を見てみたり・・・
ではこれから、ややこしい説明をしてみます。
●atsファイルの読み込み
AT1320Aを導入したPCには、おそらく以下の場所にatsファイルがあります。
atsファイルの在り処: C:\ProgramData\ATOMTEX\ATMA\Archive\
シーケンシャルに振られた番号でatsファイルが作られています(1.ats、2.ats、3.ats・・・)。ATSViewerは、このファイルを読むことで、スペクトルを表示します。
ATSViewerは、2つのatsファイルのスペクトルを同時に表示することができます。
怪しい測定結果に出会った際に、セシウムが入っていることが明らかな既知の測定結果等とスペクトルを比較検討考察することを目的として用意した機能です。サンプルatsフォルダ内にある、「003_マンション24時間換気口フィルタ.ats」「004_近所の公園の砂.ats」はCs-137、Cs-134が確実に含まれていますので、リファレンスの一例になると思います。
atsファイルを読み込むには3つの方法があります。
- ウインドウにファイルを落とす。
一番お気楽な方法です。はじめに落とされたファイルは「測定情報その1」に読み込まれます。次にまた、ファイルを落とすと、「測定情報その2」に読み込まれます。さらにまたファイルを落とすと、「どっちに読み込むか」を聞かれます。指定したほうの測定情報に、読み込まれます。
- 「atsファイルそのn選択...」ボタンを押す。
ボタンタイトルそのまんまですね。
- 「測定情報そのn」の枠内にファイルを落とす。
「測定情報その1」の枠内にファイルを落とされた場合は「測定情報その1」に。「測定情報その2」にファイルを落とされた場合は「測定情報その2」に、読み込みます。「どっちに読み込むか」いちいち聞かれるのが面倒な人(=私 ^^))向け機能です。
●スペクトルシフト機能
測定スペクトルのchをシフトする機能があります。「測定情報そのn」枠内の下のほうにあるチェックボックスがそれで、これをONにして、右にある矢印をちこちこいじることで、測定スペクトルのみをシフトすることができます。バックグラウンドスペクトルはシフトしません。
AT1320Aのスペクトルを見ているとよくあることなのですが、K-40のピーク位置が日によって数ch前後にずれることがあります。バックグラウンド減算して検出ピークを見る際、この数chのズレが問題となることがあり、そんなときに手動でちこちこ動かして、様子を見てみることができます。
例えば、サンプルatsフォルダの中にある「004_近所の公園の砂.ats」を表示してみてください。表示モードを「測定スペクトル」、「常にBGを表示する」をチェックすることで、測定スペクトル中に含まれるK-40ピークと、BG由来のK-40ピーク位置のズレを確認することができます。これは、AT1320A納入初期の慣れない時期に、ためしに測ってみたものであるということもあり、キャリブレーションが充分取れておらず、バックグラウンドとサンプルでK-40位置が少しずれています。
スペクトルシフトで -2 すると、だいたいいい感じに合ってきます。図中にも書いてありますが、ピークズレを見る際には、必ずスペクトル表示モードを「測定スペクトル」にしてください。
AT1320Aの下部を本気で鉛遮蔽している等で、BGにK-40が見えない場合や、測定検体にK-40が無い場合には使えない方法ですが、それでもAT1320Aの検出限界付近の怪しいデータを解析する際には、役に立つ場合があるかもしれません。
測定スペクトルシフトが設定されていることに気づかずスペクトル観察を続けてしまうドジ(=私 ^^))を未然に回避するため、測定スペクトルシフトが設定されているときにはメインスペクトル表示部にその旨目立つように表示されます。
●スペクトル表示設定
その1、その2共通で設定されます。
「その1表示」「その2表示」「常にBGを表示する」のチェックボックスは、そのタイトルまんまの機能です。
「縦軸」のプルダウンメニューは、縦軸スケールの種別を設定します。count を選んだ場合には、atsファイル中に記述されている各chのカウント値をそのまま表示します。cps を選んだ場合には、atsファイル中に記載されている各chのカウント値を、測定時間で割った値を表示します。同じ放射線強度を持った検体でも、測定時間が長いと当然ですが各chのカウント値は増えます。この、各chのカウント値を測定時間で割ることで、異なる測定時間の検体同士で、スペクトル波高から当該chの放射性物質濃度(正しくは放射エネルギー強度)の比較ができるようになります。
「表示スペクトル設定」の中に3つ並ぶラジオボタンは、どのスペクトルを表示するか・・・を、選択します。
[測定] - [BG] は、測定スペクトルからバックグラウンドを引いたものを表示します。AT1320Aの場合、検体密度が0.3g/cm3以下の場合、バックグラウンドはリファレンスBGが使われるのですが、このはリファレンスBGはatsファイル中に情報がありません(別の場所に専用のatsで格納されている)。ですので、検体密度が0.3g/cm3以下の場合の、バックグラウンドが関与するスペクトル表示は、AT1320Aが処理で使うスペクトルと異なってしまうことになりますのでこの点ご留意ください。
私見ですが、目視の定性観察であれば、それほど大きな差異は無いんじゃないかな~って、思っています。もし、気になるかたがいらっしゃいましたら、ご連絡ください。検体密度自動認識でリファレンスBGを読み込む仕様への変更を検討します。
「平滑化フィルタ設定」は、スペクトルデータにかける移動平均処理を選択します。
シグナルの弱めなピークがある場合、スペクトルがギザギザになってしまってトレース線の脳内補完が困難な場合があります。そんなときには、5ch移動平均か、7ch移動平均を選んでみてください。
「スケール正規化」は、2つのスペクトル比較時に威力を発揮します。
同じスケールのグラフにスペクトルを表示する関係上、あまりにも異なるピーク高を持つスペクトルを同時に表示すると、小さいほうが本当に小さくなってしまって全く認識できなくなる場合があります。
例えば、サンプルatsフォルダ中にある「001_Cs137密封線源」が好例です。これを読み込ませると、ほとんどすべての検体が太刀打ちできません。
こんなときに「スケール正規化」をチェックしますと、スペクトルの最大値を1.0として、正規化したスペクトルを表示します。当然、定量的な比較はできなくなりますが、スペクトルの形状比較等の定性比較は非常にやりやすくなります。
「主要マーカー表示」チェックボックスは、スペクトル図中に I-131、Cs-137、Cs134、K-40 に見られる主要ピーク位置をマークします。
実際に検出される位置は、K-40ピークが合っていてもセシウムあたりは左右に少し(1、2 ch ぐらい)ずれることがよくあります。どうも、そんな感じのもののようです。
●環境設定
システムメニューの「環境設定...」で、スペクトルの表示色や線のパターンを選べます。
お好きな色にカスタマイズしてください。
以上で、ややこしい説明は終わりです。わからないこと、ご要望等がありましたら、お気軽にご連絡ください。
■履歴
2012.04.08 Ver 0.1.0 公開
2012.04.10 Ver 0.1.1
- 縦軸スケールに、cps を導入。異なる測定時間のatsファイルスペクトル波高から、放射線強度の比較が出来るようになった。
- 縦横軸のスケール単位を表示するようにした。
2012. 5. 1 Ver 0.2.0
- スペクトル波高比較ができない条件での2スペクトル表示時には、その旨画面上にアラートを表示するようにした。
- 131I、137Cs、134Csにコンタミしそうな天然核種の位置を地味に表示するようにした。
- その他、画面表示等微変更。
2012. 5. 1 Ver 0.2.1
- スペクトル縦軸に必ず原点(ゼロ)を含めるようにした。
- ch移動平均処理で、窓係数を変更可能にした(マニアックな人向け)。
→workフォルダ内の、ATSFilterDef.txt を参照のこと。
■雑談
実際自分で多くの検体の測定結果分析をやってみますと、いろいろと謎なケースに出くわします。
まずは、測定値は測定器がその性能の範囲において出した定量値なのでそれ以上でも以下でもないということを常に頭に置きながら、「使っている機器(AT1320A)の性能」「測定環境要因(温度も湿度も管理されていない、普通の部屋に置いてある)」「季節要因」「宇宙嵐の影響」「検体処理のばらつき」等々、あらゆることを考えながら、夜な夜なウイスキィ片手にスペクトルを「ぼけ~っ」と眺めています。
私は、大学での専攻こそ化学系でしたが放射線は全然専門外。測定データの処理という点では抵抗は全く無いものの、その測定データが明示もしくは暗示している情報を、読み取り、解釈するという点ではまさに素人。まだまだ修行が足りないなぁ・・・と、痛感しています。
こんな素人でも、数多くのスペクトルをとにかく観察し続けることで、なんとなく、今まで見えなかった情報が見えてくるような気になっちゃうから不思議なものです。
はじめはExcelでVBA組んでatsファイル解析してスペクトル表示していたのですが、この、「ぼけ~っ」と眺める行為をお気楽かつ簡単に、さらに正確緻密に出来るようにしたいなぁ・・・と、思って作ったのがこの、ATSViewer開発の動機です。
まさか自分が放射性物質の測定データを分析する日が来ようとは2011年3月11日の夕方以前には思ってもみませんでしたが、こうなってしまったからには仕方ありません。「楽しみながら」なんていうと不謹慎だと怒り出す人が居るかもしれませんが、私は自分がやることは、楽しくなければ続けられません。
ここはひとつ、楽しみながら、放射能との長い付き合いを続けて行こうと思っています。
日々是修行也。
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