書籍発刊の辞
'96 年 2 月
CBI 作者の青木です。
この度は、なんと無謀にも、フォトレタッチの入門書なるものを出すことになりました。今でこそ私は画像処理ソフトなんてものを作ってますが、ちょっと前までは、画像処理なんて夢物語に思っていた只のマックユーザーだったのです。
写真が好きでカメラが好きな私は、昔は DOS 機ユーザーだったのですが、ひょんなことから Macintosh と出会います。そして5分間ぐらいで一目惚れ。その週末には DOS 機環境全部を売り払って Macintosh LC を買いました。1991年の春のことです。画像に強いと聞いていたマックでしたが、当時未だ16色が主流だった DOS マシンから見るとまさに「すごい」の一言でした。LC の13インチモニター上に、256色で写しだされた写真画像は、私をあっという間に虜にしました。
思えばこれが、全てのはじまりでした。人間の欲望は果てしないもので、256に感動した次の日にはもうフルカラーが欲しくて仕方がありません。で、ヴィマージュを買って13インチでフルカラー。しばらくの間は、商用ネットにアップロードされている画像を鑑賞して楽しんでおりました。ちょうど、JPEG という画像形式のはしりの時代でした。
私は写真の趣味もあったものですから、こうなると今度は、自分の写真をマックに取り込んでみたくて仕方がありません。そこで、当時は一番安かった、マイクロテック製の35mm専用フィルムスキャナを40万円ぐらいで購入します。とにかく画質にこだわっていたため、フラットベットスキャナは始めから眼中にはありませんでした。
スキャナはそろったし、フルカラーの環境もそろった。スキャナには、あの有名なレタッチソフトの定番、フォトショップの2.0Jフルバージョンがバンドルされておりました。私はフォトショップで、生まれて初めてフォトレタッチという世界を経験します。
スキャナを使ってみるとすぐにわかるのですが、どんなに調整してスキャンしても、思った通りのトーンにはなかなかなりません。また、絶対に避けようのない、画像の劣化も生じます。フォトショップは、そんな画像を自分の思いのままに加工修正してくれるすごいソフトでした。フォトレタッチは、実におもしろく楽しい世界です。
私は友人知人他人でもいい。こんなにおもしろいフォトレタッチの世界を、どんどん広めて仲間を増やそうと思いました。しかし、大きな問題がありました。「フォトレタッチって、楽しいよ」と仲間を増やそうと思っても、みんながみんな、フォトショップを持っているわけありません。私は写真好きで、金に執着を感じないタチなのでフィルムスキャナなぞを買ってしまい、たまたまそれにフォトショップがついていたからよかったですが、そうでないみんなは、いくら「おもしろい」と言っても、当時実売でも10万円を越えていたフォトショップはなかなか買えません。
「ちょっと待って。探してみるから」ということで、私はフリー/シェアウエアでなにかいいのないか探しました。画像に強いマックです。フォトレタッチソフトがないはずありません。私はテキストエディット、通信、画像ビューアと全て、フリー/シェアウエアでまかなっておりましたので、きっとフォトレタッチソフトもあると思いました。
が、なんと不思議なことに、当時はフォトレタッチが出来るオンラインソフトはありませんでした。NIH Image というのがありましたが残念256までで、しかも多機能すぎてよくわかりません。私はこのとき、「みんなで気楽に遊べる、フォトレタッチソフトがないと話にならんな」と思いました。そこで、無謀なことに「よし、自分で作ろう」という決意をしたのです。
決意をしたはいいのですが、当時、画像処理の仕組みなんて全然知りません。カラーのCRT上の色がRGBであることぐらいは知ってましたが、全くの闇でした。取敢ず「ディジタル画像処理」という6千円ちょっとするすごく難しい本を買って勉強を始めました。幸い、私は大学が工学部だったので(有機合成化学ですが)、数式にはそんなに抵抗感じずに済みました。そして、なんとかグレイスケールの画像にシャープネスをかけることに成功し、「これなら行ける」と確信を持ったものです。
そんなこんなで、商用ネット NIFTY-Serve の、写真フォーラム(FPHOTO)に、ComeBackImage 1.0 が誕生しました。1993年7月のことです。
私は趣味で写真と画像処理を楽しんでますが、これはほんとうに楽しいことだと思います。が、画像処理、フォトレタッチと聞いただけで、その敷居の高さにしり込みしてしまうかたも多いでしょう。ComeBackImage が誕生してから2年半、ひとつは自分の趣味で、もうひとつは、少しでも多くの皆さんに、このフォトレタッチの楽しさを知っていただきたいという気持で、ずっとこのソフトを開発しております。テキストでメールを打つがごとく、誰でも気軽に画像を扱える環境を整えたい。そんな気持で作ってきました。
今までは、オンラインでの提供のみでした。個人が出来る情報発信と言えば、オンラインが一番手軽ですし、きめ細かいサポートが可能ですからね。しかし、オンライン上でお目にかかれないかたには提供することは出来ません。雑誌の付録CDロムなどにも収録いただいてますが、これは少々特殊なケースです。
そんななか、今回、ソフトバンクさんから、書籍出版の機会をいただきました。私の今までの画像処理布教活動(笑)が書籍になる・・・・私としましては非常に嬉しく思います。この書籍には、ComeBackImage をベースにして作った ComeBackImage Pro というソフトがバンドルされております。ComeBackImage と同じく、ひとりでも多くのかたに、画像処理の楽しさをを知っていただければ・・・・と、思って、この本を作りました。一般の本屋さんに並ぶことにより、より多くのかたに知っていただけます。画像に興味を持つも、いまいち躊躇されているかたや、フォトレタッチを始めようと思っているかたのお役に立つことが出来れば私はとても嬉しいです。
ブラウザの Back ボタンで戻ってね。怠慢でごめん!!